ダイヤモンド社刊
1680円(税込)

「企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。事業は、社名や定款や設立趣意書によってではなく、顧客が財やサービスを購入することにより満足させようとする欲求によって定義される。したがって、『われわれの事業は何か』との問いは、企業を外部すなわち顧客の観点から見て、初めて答えることができる」(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』)

 ドラッカーとは、現代社会最高の哲人である。同時に、マネジメントを発明したマネジメントの父である。かつ、“それぞれのドラッカー”である。

 ドラッカー生誕100年の今年、世界各地でドラッカー学会が組織され、シンポジウムが開催されている。しかし日本では、ドラッカーをめぐる状況は、それらイベントを超える段階へと進行中である。

 ドラッカーの大ファンであるコピーライターの糸井重里さんが、超人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の連載インタビューでドラッカーを取り上げたのが、ついこのあいだのことだった。

 今度は、東京芸術大学の建築学科を出た後、放送作家としてテレビ番組の制作に参加、アイドルグループAKB48のプロデュースにかかわり、現在エンターテインメントコンテンツ会社で活躍する岩崎夏海さんが、ついにドラッカーの著作を“主役”とする小説を書いてしまった。

 都立高校の野球部のマネージャーになった川島みなみちゃんが、ドラッカーの『マネジメント』を読み、高校野球の顧客は誰か、顧客にとっての価値は何かという問いに答えつつ、甲子園を目指すという青春小説である。

 事業とは「顧客の創造」にありとするドラッカー経営思想の真髄の理解において最高水準にあるという作品でもある(要ハンカチ)。

「これまでマーケティングは、販売に関係する全職能の遂行を意味するにすぎなかった。それではまだ販売である。われわれの製品からスタートしている。われわれの市場を探している。これに対し真のマーケティングは、顧客からスタートする。すなわち、顧客の現実、欲求、価値からスタートする」(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』)

(「週刊ダイヤモンド2009年12月19日号」掲載)