相続は誰にでも起こりうること。でも、いざ身内が亡くなると、なにから手をつけていいかわからず、慌ててしまいます。さらに、相続をきっかけに、仲が良かったはずの肉親と争いに発展してしまうことも……。そんなことにならにならないように、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)の著者で相続の相談実績4000件超の税理士が、身近な人が亡くなった後に訪れる相続のあらゆるゴチャゴチャの解決法を、手取り足取りわかりやすく解説します。
本書は、著者(相続専門税理士)、ライター(相続税担当の元国税専門官)、編集者(相続のド素人)の3者による対話形式なので、スラスラ読めて、どんどん分かる! 【親は】子に迷惑をかけたくなければ読んでみてください。【子どもは】親が元気なうちに読んでみてください。本書で紹介する5つのポイントを押さえておけば、相続は10割解決します。
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

親の認知症リスクに備えるために
絶対知っておくべきこと

無知(相続のド素人)認知症は相続と絡む大きな問題ですよね。現在52歳の僕でも、人の名前が出てこないことがしょっちゅうあるくらいもの忘れをしやすくなっていますが、80代の両親のことですから、よりもの忘れがヒドくなっていることは容易に想像できます。
前田(相続専門税理士)ちょっとしたもの忘れなら、単なる老化現象なので心配いりません。ただ、電話で話をしたこと自体を忘れていたり、旅行したこと自体を忘れていたり、記憶の一部が完全に抜け落ちているときは、認知症の疑いがあります。
厚生労働省によると、65歳以上の高齢者に占める認知症の人の割合は2割ほど。つまり5人に1人が認知症になる計算ですから、決してひとごとではありません。
無知 85歳以上になると、半分以上の人が認知症になってしまうのか……こうやって数字を目のあたりにすると、恐くなりますね。うちの両親は、まさに80代半ばですから。

認知症で財産管理ができない!
成年後見制度が家族を救う理由とは?
国税(相続税担当の元国税専門官)具体的に、認知症になると相続にどう影響しますか? 何か対策があれば教えてください。
前田 ひとたび認知症になると、さまざまな手続きを自分ではできなくなります。そこで選択肢に入ってくるのが、「成年後見制度」(法定後見制度)を利用することです。
これは、認知症や精神的な障害などが原因で、判断する力や意思を伝える力がない人のために、家庭裁判所がサポートする人を選任する制度です。サポートする人は「成年後見人」、サポートを受ける人は「成年被後見人」といいますが、成年後見人が行う日常業務は2つに大別されます。
1つは入院手続きなどの「身上監護」、もう1つは通帳保管などの「財産管理」です。なお、成年後見人になった人は、年1回、本人の生活状況や健康状態、財産目録などを自主的に家庭裁判所へ報告することになっています。

親の財産を詐欺から守れ!
成年後見制度の仕組みと注意点
国税 要は、認知症になった本人に代わって、誰かに身の回りのことやお金の管理を任せられるわけですね。成年後見人の手続きはどうすればいいですか?
前田 家庭裁判所で申請手続きをして、後見開始の審判の申し立て後、通常は2~4カ月ほどで成年後見人が決まります。その後、成年被後見人の財産は、家庭裁判所の監督のもと、成年後見人が管理します。
こうなると成年被後見人本人であっても自由に財産を処分できなくなり、単独で行った法律行為を成年後見人が取消権を行使して、とり消せるようになります。
無知 最近は認知能力が衰えた高齢者を狙った詐欺が増えているみたいなので、僕も心配しています。認知症になった家族が詐欺のような契約をさせられたり、勝手に財産を処分しそうになったりしたときは、成年後見制度を使うと助かりそうですね。
親の認知症にどう備える? …「成年後見制度」が1つの選択肢
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。