「不倫バレからの離婚」というケースを耳にすることは多い。男女の恋愛の機微を綴った文章に定評のある著者いわく、不倫が不倫以上の関係に発展するのは「3つの条件」が揃ったときだという。筆者が語る「不倫をする資格のある人」とは?本稿は、鈴木涼美『不倫論 この生きづらい世界で愛について考えるために』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。
不倫の末、離婚、再婚…
夫婦関係が破綻した人々
男性の知人のお話。大学を1年留年してそれなりに有名な企業に入り、地方勤務を終えたタイミングで公務員となっていた大学のゼミの後輩と結婚。2児をもうけるが、2人目が生まれる直前頃から夫婦仲が悪化。妻が別離を口にするが、彼はそれを受け入れず、なんとか関係を立て直す。その直後から職場の2つ年下の女性社員と不倫関係になり、彼女の家と自宅の二重生活を始める。
今度は彼が離婚を望むが、2人目が生まれた直後ということもあり、妻が結婚生活の継続を望む。結果、3年以上の二重生活を経て、ようやく離婚が成立。
不倫関係だった後輩社員と入籍し、今年の末には子供が生まれる。
女性の知人のお話。合コンで出会って半年で子を授かり入籍したが、結婚直後から旦那とはあまりうまくいっておらず、第2子づくりには踏み切れなかった。子供が保育園に入ってから、近くの飲食店でアルバイトを始め、そこで出会った同店のエリアマネージャーと一晩をともにしたところ、すぐに旦那の知るところとなり、相手も自分自身も慰謝料を請求される。
それまでエリアマネージャーとはたった一晩ともに過ごしただけの、恋人ともいえない関係だったが、旦那の仕打ちにうんざりしたタイミングで急接近。相談に乗ってもらったり、慰謝料を立て替えてもらったりしているうちに愛が芽生え、旦那との離婚を決意。
当初は離婚に全く応じようとしなかった旦那だが、子供の親権について譲歩することでなんとか納得し、離婚。エリアマネージャーと再婚を前提として同棲を始めた。
慰謝料、親権、再婚できない…
不倫は「それなりの犠牲」を伴う
このどちらも、最近1年以内に離婚を経験した知人のエピソードだ。男性の方は長期にわたる不倫関係、女性の方は一夜のアフェアという違いはあるものの、結婚しながら始まった関係がのちにもともとあった婚姻関係を押しやり、不倫という枠組みを出て、普通の男女の関係として生まれ変わった事例である。
当然、それなりの犠牲を伴いながら。