2021年に北川景子主演で放送され、TVerの再生回数が歴代ドラマで1位を記録するなど大いに話題となったドラマ『リコカツ』(TBS系)。独身だった著者はこのドラマを視聴し、結婚に抱いていた仄暗い不安の中に「一筋の光」を見たのだという。はたして、その理由とは。本稿は、鈴木涼美『不倫論 この生きづらい世界で愛について考えるために』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。
30代後半になると
離婚する友が増える!?
ふと気付くと休みに気軽な気持ちで「タイ行こうよ」とか「台北行こうよ」と誘える友達が年々限定されてきて、気付けば深夜の飲み会に顔を出してくれる面子も明らかに偏っていき、高校や大学の卒業と同じように独身にも卒業というようなものがあってそれぞれが人生の新しいステージに進んでいくのかもしれないな、と思ったのが大体27歳の春頃。
ただ高校のように強制的に押し出してくれるシステムはないから、ごく自然に新しい扉を開ける人もいれば、そのためにしっかり準備や努力をして力ずくで開ける人もいれば、開けないことを決める人もいれば、自然に進んでいくような機会はなく、努力や準備をするほど意思も固まっておらず、かといって開けないと決めていないかつての私のような人もいるので、独身の友人たちとのあいだには、同級生はもちろん、後輩もどんどん送り出して自分は留年し続けている大学院生のような、あるいは自分だけべらぼうに刑期の長い囚人のような、そこはかとない寂しさを共有する仲間意識も芽生えた。
さてこれから10年経つと、未だにぽつりぽつりと結婚していく友人や、妊娠や出産でしばらく気軽に誘えない友人はいるものの、それと同じくらい、飲み会や海外旅行に復帰してくれる友人も増えた。子育てが落ち着いた既婚の友人もいたし、離婚して完全独身現場復帰という友人もいた。さらに、久しぶりに連絡がきたと思ったら、離婚が難航して憂さ晴らしをしたいから飲みに行こうという友人なんかもたまにいる。
素人としては、ロマンスや戦略や運命や人生最大のパーティーなど、色々な要素のある結婚の形が千差万別なことに不思議はないものの、離婚というとどうも事務的な匂いがして、それほど各々のドラマに富んだもののように思っていなかったのだが、いざ間近に目撃してみると、実にそれぞれが多様で、やはり千差万別なものなのだと実感する。