ただ、イレギュラーな出会いから離婚前提で始まった2人の新婚生活はむしろドラマチックに展開していくので、実際に「リコカツ」を必要とするのはむしろ周縁的なキャラクター、主人公たちの両親や姉の方で、具体的な離婚のハードルやアルアル話、禁じ手などが例示されるのはそちらの方だ。近年増加が指摘される熟年離婚の形や、離婚経験者や離婚希望者にとって身に覚えのあるであろう台詞も描かれる。

離婚を前提とした
結婚なら怖くない!?

 はたして視聴時は思い切り独身女性であった私にとって、具体的な離婚ノウハウ、リコカツのススメや離婚アルアルなどは正直全然関係なかったのだが、むしろ『リコカツ』のタイトルから逸れていく主人公カップルの方は結構示唆に富んでいるような気もする。

 周囲にぽつりぽつりと離婚経験者が増え、また自分の生活が独身のままそれなりに成立しているアラフォー独身女性としては、たとえ一瞬結婚に興味が湧いても、離婚のリスクはかなりの比率でその興味を曇らせるものだからだ。

 前向きな離婚やそれなりにスムーズな離婚事例だって周囲にはあるが、話のネタとしてしつこく会話に登場するのは、どうしたって難航した話やトラブルが多い。

 夫が離婚に合意してくれなくて2年近く経ったとか、別居期間中にうっかり新しい恋をしたら自分も新しい恋人も多額の慰謝料を請求されたとか、富裕層の夫の財産隠しが巧みで自分には何も残らないとか、子供に一切会えなくなったとか、そんな話を聞くと、まさに結婚が出口のないトラップ、行きはヨイヨイ帰りは怖いというイメージになって、「家庭を作ることに興味はあるけど失敗が怖すぎる」状態になる場合は少なくない。さらに言えば、結婚の話になってしまうことが嫌で恋愛すら始めるのが面倒・怖いと感じている人だっている。

 そもそも旧来の結婚制度と慣習が、女性の自立の道が絶たれていることで、女性側の不満では揺るがないことを前提として成立していた側面があるのだから、すでに別の道を示されている女性らにとっては、内側から開けられない巣箱のイメージが払拭できないのは当たり前でもある。