独身生活が長いほど大変な
結婚相手との「擦り合わせ」

 加えて、ほとんど事故的に結婚した主人公たちは、当然お互いにすでに成立した生活があって、それについて何の擦り合わせもないまま共同生活を始めるので、絶対無理そうな擦り合わせが力技でなんとか実行されていく様にもちょっとした希望がある。長年独身生活を送っていればいるほど、自分の生活の快適な回し方は固定してしまい、そこに自分と同じだけ強固に固定した別の生活が差し込まれることなど考えたくもなくなってくる。

 コロナ禍で自宅時間が増えた昨年は尚更、「1人暮らしで助かった……」と思っているシングル勢はいたはずだ。ただ、極端に現代的な女性と極端に前近代的な男性の生活が強引に混ざり合わさっていくのであれば、そういう力技って意外と有効なのかも、という気分になる。

 毎年25万組以上の夫婦が離婚する現代において、結婚を息苦しく感じさせないための装置としての離婚があるのだとすれば、そんな空気孔を作ってまで維持しなくてはならない結婚制度とは一体何なのだという気にもなるが。