ドラマ『リコカツ』が
提示した様々な離婚の形
そんな離婚を1つのテーマとしたドラマ『リコカツ』(注1)は、離婚というアイデアを積極的なものとして描いたという点で話題を集め、放送されるやTVerの再生回数が歴代ドラマで1位を記録するなどした。
バリバリ仕事をしているが恋愛では黒星がつき、また自分の生家には少し複雑な事情のある女性が、雪山で不慮の事故にあい、現代人と思えないほど無骨なイケメン自衛官に助けてもらう、という『愛の不時着(注2)』のパロディ的なオープニングに続き、その2人が衝動的に結婚するところから物語は始まる。
衝動的なものだから当然、2人の生活や価値観は全く擦り合わせができておらず、夜の営みも未経験のまま、現代キャリア女子と前近代自衛官男子の同居生活はスタートし、やはり当然のごとく衝動的に「離婚」の結論を出す。
しかし離婚といってもその日にすぐできるわけではないので、離婚前提で回り出す結婚生活の中で、少しずつ2人の生活や価値観の擦り合わせがなされていく、という物語だ。
結婚が「誰でも当然のように行き着く先」ではなくなった、と説いた山田昌弘・白河桃子の『「婚活」時代』が話題になったのが2008年ですでに15年以上前、就職活動の略語である「就活」に結婚するための準備や活動をなぞらえた「婚活」はもはや自然に使われる言葉となって久しい。
ロマンチック・ラブの当然の帰結として結婚があるのではなく、多くの場合はそのための努力と戦略が必要だと示す言葉の登場は当時、それなりのインパクトのあるものだった。入口戦略に名前があり、ましてやや減少傾向にあるとはいえ、婚姻件数の約3分の1ほど離婚件数がある時代に、出口戦略にも名前があっても何もおかしくない。ドラマでは離婚のための努力や準備、必要なスキルや行動が「リコカツ」と呼ばれて紹介される。
(注1)『リコカツ』(2021年、TBSテレビ系)。泉澤陽子脚本、北川景子主演
(注2)『愛の不時着』(2019年、韓国tvN)。日本でも2020年にNetflixにて配信され、話題となった