第2の課題は、意思決定の遅さです。日本企業の多くは複数の階層を経る意思決定プロセスを採用しており、これが迅速なプロダクト改善の妨げとなっています。海外のSaaS企業が数週間で改善を実施している間に、日本企業ではその検討に数カ月を要してしまうケースも珍しくありません。PLGでは顧客フィードバックへの迅速な対応が不可欠であり、組織内での承認手続きに時間がかかると、競争力を維持するのが難しくなります。
第3の課題は、プロダクト開発への投資不足です。多くの日本企業では、プロダクト開発が「コスト」として認識され、短期的な収益性が優先されがちです。しかしPLGの成功には、直感的な使いやすさと高度な課題解決能力を備えたプロダクトが必要不可欠です。その開発には持続的な投資とリソース確保が欠かせませんが、現状ではプロダクトへの投資が後回しにされ、PLGに必要な基盤が整わない状況が続いています。
PLG成功に向けて日本企業に
求められる3つの改革とは
PLGモデル導入への課題を克服するため、日本企業には以下のような取り組みが求められます。まず、営業主導からプロダクト主導への企業文化の転換。次に、意思決定プロセスの簡素化と、現場の裁量を広げる組織改革。そして、プロダクト開発を「投資」として捉え、短期的な成果にとらわれない、長期的な視点でのリソース配分です。
ユーザーの課題を解決し続けるプロダクトは、自然と顧客基盤を広げ、安定した収益を生み出します。日本企業がPLGの考え方を採り入れ、従来の営業主導型モデルの一本足打法からの転換を図れば、グローバル市場での競争力を高めることが可能になるでしょう。そのためには、一時的な売上増加ではなく、顧客との長期的な信頼関係構築を重視する姿勢が重要です。
次回は、プロダクト成功の鍵の1つでもある、プロダクト開発への投資と人的資本経営をテーマに、さらに考察を深めたいと思います。
(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)