アルムナイにとって価値のある「企業特殊的能力」

 就社型である日本のメンバーシップ型雇用には以下のような特徴があります。

◎未経験人材に対して、自社の事業・業務・文化に合わせるための手厚い教育をする
◎終身雇用・長期雇用が前提
◎中途採用者ではなく、新卒採用者が大半を占める
◎教育目的のジョブローテーションや、会社都合での異動や配置転換が発生することが一般的

 上記のような特徴がある組織では、「企業特殊的能力」と呼ばれる、その企業でしか通用しない特殊な知識やスキルが大きくなる傾向があり、それこそがまさに、私がメンバーシップ型雇用の日本企業とアルムナイ・リレーションシップとの相性が良いと考える理由です。

 新卒採用者が中心で、同じ企業内でのジョブローテーションや異動が繰り返されると、ジョブごとだけではなく、企業内のどこにいても活用できる能力が生まれ、そして、重宝されます。わかりやすいところでは、社内の共通言語や社内の特殊なルールなどがあります。社外の人と話した時に、それまでは当たり前だと思っていた言葉やルールが全く通じず、その会社だけの特殊なものだったと気づいたような経験はないでしょうか? 言葉やルールのように言語化しやすい形式知以外にも、言葉で表現するのはなかなか難しい暗黙知としての企業特殊的能力も多くあります。そして、同じ企業での企業特殊的能力を共有する人同士は、コミュニケーションコストが低かったり、認識の齟齬が発生しづらかったりと、一緒に仕事をする相手として最適なのは明白でしょう。

▲書籍「アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値」
出版社:株式会社日本能率協会マネジメントセンター
著者:株式会社ハッカズーク/鈴木仁志、濱田麻里
▲書籍「アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値」
出版社:株式会社日本能率協会マネジメントセンター
著者:株式会社ハッカズーク/鈴木仁志、濱田麻里