「人的資本経営」のカギを握る「アルムナイ」。企業が自社の退職者である「アルムナイ」とどのような関係を築いていくかは、人材の流動性がますます高まるこれからの時代において重要だ。アルムナイ専用のクラウドシステムを提供するなど、アルムナイに関する専門家である鈴木仁志さん(株式会社ハッカズーク代表取締役CEO兼アルムナイ研究所研究員)が、企業の「辞められ方」、従業員の「辞め方」を語る連載「アルムナイを考える」――その第6回をお届けする。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
>>連載第1回 「退職したら関係ない!」はあり得ない――適切な「辞められ方」「辞め方」を考える
>>連載第2回 誰もが明日から実践できる「辞め方改革」が、あなたと企業を幸せにする理由
>>連載第3回 「辞め方」と「辞められ方」――プロサッカークラブに見る“アルムナイ”の大切さ
>>連載第4回 “出戻り社員”が、会社と本人を幸せにする理由と、お互いが成功する方法
>>連載第5回 内定辞退者や早期退職者に対する“負の感情”が減る「辞め方改革」とは?
「アルムナイ採用」は転職や独立による退職者も対象
近年、アルムナイに対する注目度が増すなか、アルムナイを再雇用する「アルムナイ採用」の注目も高まっています。その一方で、「アルムナイ=再雇用」という偏った考え方が広がってしまっていることも事実で、アルムナイを「再雇用のタレントプール」と考えている企業もあるくらいです。社内外を知る貴重な人材であるアルムナイの価値を知れば知るほど「再入社してほしい」という気持ちが強くなることは理解できますが、アルムナイ側も同じ考えなのでしょうか。そして、「いますぐに再入社してほしい」と会社側が焦ってしまう気持ちもわかりますが、「急がば回れ」こそが「アルムナイ採用」の成否をわける重要なポイントになるのです。
「アルムナイ採用」という言葉が使われるようになったのは、2022年頃からですが、2010年頃から退職者を再雇用する動きはあったので、「カムバック採用」や「ジョブリターン制度」という言葉を耳にされていた方も多いのではないでしょうか? これらの言葉に明確な定義は存在しないものの、2010年頃の「カムバック採用」や「ジョブリターン制度」は、結婚・出産・介護・配偶者の転勤などによる退職者を主な対象とし、再雇用時の処遇やポジションは退職時と同等で、企業側から積極的なアプローチをするのではなく、退職者からの再入社希望を待つというものが一般的でした。それに対して、再雇用だけを目的とせず、企業と退職者が退職後も繋がり続ける「アルムナイ・リレーション」の一部である「アルムナイ採用」は、転職や独立などによる退職者も対象とし、再入社時の処遇やポジションは他の中途採用者と同等であることが多いというのが特徴です。