丁寧な分類をしたあと
さらに「そこからも外れる人」を考える

能町 一般的なゲイの人……って言い方も変ですが、自分が男だと認識したうえで男の人が好きだという人に対しても、理解したつもりになった人が「そういう、どちらでもない生き方もいいと思う!」って平然と言ってくる(笑)、っていうことですよね。森山さんが大学で教えている学生でも、そういう人はいますか?

森山 いや、僕の授業を受けている学生だと、さすがにいないですね。はじめからまったく興味がないわけじゃない人たちなのと、説明に多くの時間をかけられるので。

 たとえば、男女二元論に沿った表みたいなものを書いてもらうんです。性的指向の対象や自分の性同一性、出生時に割り当てられた性別に「男」「女」を組み合わせて、全部で何パターンあるかを検討してもらう。そうすると、セクシュアル・マイノリティにあたるカテゴリーに「男」「女」というラベルがつくことが当然だと理解してもらえるんです。それを書いたうえで、「とはいえ、この表って二元論的だよね」と説明できる。

 しかも、その「男」「女」からの除外されっぷりが、同性愛者、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどで等しくはない、という問題もあります。男性同性愛者は男性なんだけど、トランス女性は女性じゃないって言う人も残念ながらいるじゃないですか。

 セクシュアル・マイノリティなら三元論の3つめの箱に全部入っているわけではない、というところが、さらに問題なんです。まず「トランス女性は女性です」「トランス男性は男性です」って、きちんと二元論のなかに入れてもらう作業をしないと、トランスジェンダー当事者の性のあり方が尊重されず、ミスジェンダリング(トランスジェンダー男性に「彼女」という代名詞を使うなど、他者をその人が望まない性別の人間として扱う発言をすること)などが起こってしまう。

能町 ゼロから知ろうとするとたしかにすごくややこしいけど、すごくざっくり「いろんな人がいるんですね」じゃ、ダメですよね。最初に戻って一旦丁寧に分けたうえで、でも本当は分けられない人も出てくるよ、って説明しなくちゃいけない。