幻肢痛のパターン(2)足裏型
・足の裏一面にジンジンと鈍痛がある。
・かなり明確に痛みの場所のイメージがあり、空中に固定されている。
・足の裏が鉄板になったような感覚。
・突然痛み出し、長いと15分くらい続いて自然に収まる。

足裏型同書より転載 拡大画像表示

幻肢痛のパターン(3)局所発火型
・明確なイメージ上の足にバチンッ!と痛みが走る。例えば右足の薬指、かかと、土踏まずの辺りなど。
・全パターンの中で一番痛くて、残った足がビクンッとすることがあるくらい。でも痛いのは一瞬。
・1回発火して終わりじゃなくて、複数回連続することが多い。

局所発火型同書より転載 拡大画像表示

痛みが発生するエリアは
残った足の延長線上にある

 痛みのパターンを考えながら思い出した話がある。

 現象学の哲学者であるモーリス・メルロ=ポンティが『知覚の現象学1』(竹内芳郎・小木貞孝訳、みすず書房)の中で身体空間について考えるために採用していたシュナイダー症例というものだ。戦争で脳の一部にダメージを受けた兵士の名をつけられたこの症例は、運動を「抽象的運動」と「具体的運動」に分けている。

 抽象的運動とは、「頭の上に左手を置きなさい」など指示された動作。具体的運動は蚊に刺された箇所に自然と手が行く動作のこと。

 脳のある箇所にダメージを受けたシュナイダーさんは、抽象的運動を指示されると身体全体をもぞもぞさせて、左手や頭がどこにあるのかを時間をかけて探しながらでないと達成できなかった。一方、具体的運動はすぐに身体が動いたそうだ。つまり空間の客観的な定位がわからなくなっている状態らしい。だからまず自分の身体を動かして、各部位がどこに位置するのかをマッピングすることで、指示された部位を探し出すそうだ。