最近、筆者の周囲では3Dプリンタの購入・利用例が目立つ。購入しているのは、クリエーターやデザイナーといったモノづくりを専業とする人ではなく、プログラマ、写真家、教育者などさまざまな職種の人々だ。用途も、趣味のジオラマ作りや自分用の実用小物の制作、地形図の立体化などさまざまで、まさに十人十色である。一方で、生成AIの進化も見逃せない。この2年あまりでチャットやテキスト生成→画像→楽曲→動画と幅が広がり、今は3Dデータの生成までできるようになった。そこで今回は、生成AIと3Dプリンタの連携によって、いわば「デジタル民芸品」を作る方法を紹介しよう。(テクノロジーライター 大谷和利)
15年前、初めて3Dプリンタを買ったときの思い出
まずは簡単に3Dプリンター遍歴を振り返ってみる。最初に手に入れたのは、もう15年も前の2010年ごろのことだった。2009年に、現在も最もポピュラーな熱溶解積層(FDM)方式の3Dプリンタの基本特許が切れたため、1990年代には1000万円以上していたものが、一気に数十万円レベルに落ちてきたのだ。それでも、まだおいそれと手が出る価格ではなかったが、アメリカのクラウドファンディングで500ドル前後のキットが販売されていたため、思い切って支援してみたのである。
そのプロジェクトは無事に成立し、終了から少し経って文字通りバラバラのパーツが届いた。ところが、肝心の組み立て説明書が入っておらず、YouTubeの動画を見よとのこと。しかも、リンク先の動画を再生してみると、確かに開発者自らが組み立ての手順を実地に説明してくれるのだが、十数分ほどで「今日はここまで。続きは、またアップする」といって終わってしまった。結局、何度かにわたり続きの動画のアップロードを待ち、完成するまでに1週間以上かかった記憶がある。
さらに、最後の「電源をつないで……」という段になって、その電源ユニットがどこにもないことに気づいた。問い合わせると「日本用の電源ユニットは現地で手配してくれ」といわれ、仕方がないので電気街の自作PCコーナーを物色し、規定を満たす最も安価な製品を買ってつなぎ、事なきを得た。
だが、まだ問題があった。筆者はそれまで3Dプリンタの実物も、出力されたアイテムも見たことがなかったので、完成後の各部の精度やプリントのクオリティの基準が分からない。何とか手探りで調整を済ませてサンプルデータを無事にプリントできたときには、大いに感動した。今の標準から見れば数倍も粗い出力結果だったが、「これが小中学生の頃にあったなら……」と思ったものだ。
しかし、この時の苦労のおかげで3Dプリンタの仕組みがよく理解でき、のちに別の製品の機能に不具合が出ても、どこをどういじれば直せるかが分かり、3Dプリンティングに関する記事を執筆するときにも、できることとできないことを踏まえて書けたのである。