建設後50年以上の施設、加速度的に増える
2040年には港湾も66%、下水道も35%

 今回、破損した八潮市の下水道は、1983年に建設されたものだった。つまり建設後、42年がたつ。

 社会資本の耐用年数としては、一般に50年程度が目安とされている。

 国土交通省の資料によれば、建設後50年以上経過する施設の割合は、次の通りだ(単位%、注1)。

 これらは、高度成長期以降に整備された社会資本で、今後、建設後50年以上経過する施設の割合は加速度的に高くなるという。

 下水道の場合、24年9月末時点で点検対象となっている管路は、全国の総延長49万キロメートルのうち、3463キロある(注2)

(注1)「社会資本の老朽化の現状と将来」(「社会資本の現状と将来」、国土交通省)
(注2)「令和5年度下水道管路メンテナンス年報(概要)」(令和6年10月、国土交通省)

 水道についても、同様に劣化の問題がある。

 東京都内では、毎年10件以上の水道管破裂事故が起きている。ところが、水道の維持・補修も容易なことではない。

 導・送・排水管を含めた東京都の水道管路線の総延長は約2万8000キロだ(注3)。これは、地球3分の2周に相当するほどの膨大な長さだ。一方、年間で補修できるのは、500キロ程度だと言われる。だから全てを補修するには50年以上かかることになる。

 東京都水道局はマスタープランの中で、送水管ネットワークの整備率を、19年度末の81%から30年度末で93%にするとしている。

(注3)「東京水道施設整備マスタープラン 第2章」(2021年3月、東京都水道局)

過去の成功の「重み」をいま負う
短期間で整備した日本の「特殊問題」

 日本の社会資本は、高度成長期以降に急速に整備された。

 例えば東京都の場合、前項で見た資料によれば、浄水場の施設能力の約7割は、1950年(昭和35年)から65年(昭和50年)の、わずか15年の間に整備された。

 経済が急成長していたために、こうしたことが可能だったのだ。

 ところが、整備していた時代には気付かなかったことがいま起きている。