地方では、下水道の普及率が低いか、敷設されていない自治体が少なくない。また大都市圏でも上水道と同じく老朽化が進んでいる。人口減による不採算に財政難も加わって、今後の下水道の普及率向上には限界が見えてきており、老朽化への対応も困難になることが予想される。さらに、上水道にはないある“爆弾”が、民営化など効率化のための手法の導入をも阻む。特集「自治体危険度ランキング」(全5回)の#4では、下水道料金や経営指標などから下水道危険度ランキングを作成し、運営に苦しむ自治体をあぶり出した。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
浜松市、須崎市で下水道コンセッション事業開始、初年度の効果に高まる期待
静岡県浜松市。遠州灘が目の前に広がる風光明媚な海岸に、おそらく昨年日本で最も多くの見学者が訪れた下水最終処理場がある。2018年4月より、設備の経営と維持管理および改築を市から民間出資の合弁企業である浜松ウォーターシンフォニーが受託した、西遠浄化センターがそれだ。
日本で初めて、下水道分野でコンセッション(運営民間受託)方式を取り入れた処理場で「自治体関係者や一般市民、メディアなど年間1000人近くが見学に来た」と同社の鹿間光明事業本部長は明かす。
浜松市は、もともと県が運営していた処理場が市の管轄に移ることが決まったものの、運営を行う人員が移管されないことが分かった11年から、コンセッション導入の検討を進めてきたという。
17年に仏ヴェオリアの日本法人、JFEエンジニアリング、オリックス、東急建設、須山建設の出資による浜松ウォーターシンフォニーが20年間の運営を受託することに決まった。
コンセッション開始から1年。西遠センターが担当するエリアの住民からの下水道利用料金で運営する同センターでは、設備のメンテナンスの頻度や稼働率を調整したり、脱臭剤の量を臭気に合わせて変えたりするなどの創意工夫で、当初の年間経費の予算17.4億円を1.1億円削減することができたという。また営業利益が2.9億円と、当初計画の6600万円の4倍にもなるなど、初年度としては上出来の成果を上げた。