AIで高騰の米電力株、ディープシークに足すくわれるPhoto:NurPhoto/gettyimages

 中国の人工知能(AI)新興企業ディープシークは、米電力業界の重大な懸念をあらわにした。AIブームが当初予想されたほど多くの電力を必要としない可能性だ。

 ディープシークの生成AIモデルは、学習に使うエネルギーが米競合企業のモデルよりも大幅に少ないことから、先週の米株市場でテック株と電力株が急落。AI向けデータセンターの成長予想で押し上げられた株価の上昇分を削った。今やそれらのデータセンターへの電力供給を予定する企業は、AIが急速にエネルギー効率を高める可能性に向き合う必要がある。

 ただ経営陣やアナリストは、目先のデータセンター投資計画がディープシークの登場によって影響を受ける可能性は低いとしている。テック企業はすでに大量の電力供給に関する契約を電力会社や発電事業者と結んでいるためだ。しかし長期的には、AIのエネルギー効率向上を背景に、数十年にわたり稼働する新規発電所への大規模投資の必要性が疑問視されると考えている。

「開発事業者としては、需要の伸びが描く軌道をディープシークのような要因が変えた場合にいつでも活動を調整できるよう、十分に統制の取れた体制を維持したい」。全米で発電所や再生可能エネルギー事業を運営するLSパワーのポール・シーガル最高経営責任者(CEO)はこう述べた。

 コンステレーション・エナジー や ビストラ といった勢いのある米電力事業者は、既存の発電所や再生可能エネルギー事業を拡大する計画を打ち出し、AIブームの代表的な勝ち組とされてきた。先週、こうした計画の収益性が予想ほど高くない可能性が浮上し、これらの企業の株価は急落に見舞われた。その後やや持ち直したが、依然として最高値を下回っている。