2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

「プラス10倍の投げかけ」をすれば、人の役に立つことができる

 私はもともと、のどが強くないらしく、長く話をすると、声がかれたり、咳き込んだりすることがあります。

 そのため、講演会でお話をさせていただくときには、主催者の方にお願いをして、マイクとスピーカーを用意していただきます。

 あるとき、福岡でお話をした際、マイクが用意されていなかったことがありました。

 地声が大きい方なら問題はなかったと思うのですが、のどが弱い私には、負担がかかったのかもしれません。

「10時間」以上、大きな声を出し続けた結果、翌日から、咳き込むようになってしまいました。

 福岡での会を終えた私は、大分県の日田市まで移動しました。日田市で開催される集まりに参加するためです。

 日田駅に到着すると、駅前に薬局が見えたので、私はのど飴と、のどの薬を買うことにしました。私がのど飴を探しているとき、自動ドアが開いて、ひとりの男性が入ってきました。

 この男性は、薬局のオーナー(薬剤師)だったのですが、私は「お客さんかな?」と思い、しゃがんだまま、薬を選んでいました。

 するとその男性が、頭上から「のどの薬ですか?」と声をかけてきました。

「ええ、ちょっとのどがかれて、話すのに支障があるもので」と答えた私に、その「頭上の声」は、不思議な反応をしたのです。

「その声、どこかで聞いた覚えがある……。もしかしたら、小林正観さんですか?」

「えっ?」と思って、その男性の顔を見てみると、半年前に、長崎まで、わざわざ私の話を聞きに来てくださった方だったのです。

 日田市での集まりが終わった翌日、この薬剤師の男性と話をする機会がありました。

 すると、「薬局を続けるかどうか、迷っている」というのです。

 理由をうかがうと、「薬が本当に人の役に立つものなのか、自信がなくなってきた。薬を売れば売るほど、人の体を壊しているのではないか、と思うようになった」そうです。

 そこで私は、次のような提案をしました。

「体の不調や痛みを抱えている人に、『とりあえず』の対症療法として、薬を売ることは肯定してもいいのではありませんか? もし、薬を売ることに罪悪感があるのなら、こうしてみるのはどうでしょう。今までの薬剤師の仕事の『10倍』の量を『世のため、人のため、社会に貢献するため』に費やしてみるのです。そうすれば自信が持てるし、喜ばれる存在になれると思います。今までの仕事は、自分の人生の『10分の1』でしかなくなりますから、自己嫌悪や罪悪感はずいぶん薄くなるのではないでしょうか。もちろん、今までの10倍のエネルギーを注いで生きるわけですから、肉体的に大変になるかもしれません。でも、それができれば、あなたの悩みは解決すると思います。いかがですか?」

 薬剤師の男性は、深く、深く、うなずきました。

 私たちのやりとりを聞いていた別の男性が、ポツリとこんなことを言いました。

「いつでも、それが10分の1になってしまうような『プラス10倍の投げかけ』を考えて実行していれば、クヨクヨしたり、自分を責めたりしないですみますね」と。

 私も、その通りだと思います。