2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

「感謝」は、すべての存在物を味方につけるオールマイティの方法

 感謝の対象は、「人」だけでなく、「もの」「こと」など、日常生活のすべてです。

 私たちの目の前にあるものすべてに「魂」が入っていると考えることもできますから、その「魂」を大事に扱うことも、「喜ばれるように生きる」ことにつながっていくようです。

 たとえばコップを持つときは片手で持つのではなく、もう片方の手を添えるようにする。落とされる心配がなくなった「コップの魂」は「この人に持ってもらってよかった」と喜ぶらしいのです。

 イチローさんは、バットもグローブもスパイクもすべて自分で手入れをしているそうです。試合が終わるたび、道具の汚れを丁寧に落とし、常にきれいにしています。その結果、イチローさんは「道具を味方にすることができた」のではないでしょうか。

 相手ピッチャーが投じたボールに対し、ときとしてバットが勝手に反応してボールをとらえ、はじき返しているようにも見えます。

 首位打者を取るような選手は、「内野安打」がとても多い。当たり損ないのゴロが野手の正面に飛ばずに塁間に転がり、ヒットになる。これも、道具が味方してくれた結果と考えることもできます。

 2009年3月に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の決勝戦(韓国戦)で、イチローさんは、日本を優勝に導くタイムリーヒットを放ちました。

 優勝後のインタビューで、イチローさんはその打席を振り返り「神が降りてきた(神が打たせてくれた)」と形容しました。また、日本代表選手のひとりも、イチローさんを「神」にたとえていたのが印象的です。

 シリーズ中、なかなか調子の上がらなかったイチローさんは、たびたび「まわりのみんなが自分を支えてくれている」とチームメートへの「感謝」を口にしていました。

 チームメートへの感謝、ファンへの感謝、道具への感謝が、あの1本のヒットに集約されていたのかもしれません(ちなみに、イチローさんの決勝打を「まるでシナリオがあったようだ」と評した野球解説者がいます。これはとてもおもしろい話です)。

「感謝」というのは、「ヒト」が「人間」になるための「切り替えスイッチ」らしいのです。

「ヒト」+「感謝」=「人間」

「喜ばれると嬉しい」という本能に目覚め、「感謝する、感謝される」ことのおもしろさに気がついた「ヒト」が「人間」らしいのです。

「人間」はこの世の中で、ひとりで生きているわけではありません。「ありがとう」と言い合いながら生きていくものです。

 そして「人間」にとって、すべての存在物を味方につけられるオールマイティの方法論が「感謝」らしいのです。