再開発された後、50年から100年が経過し、建物が陳腐化・老朽化したとしても、ふたたび再開発を行うことが極めて難しくなるということです。
というのも、再開発にあたっては多数の所有者の合意形成が必要になりますが、1度目の再開発で土地や建物が複雑に共有化・区分所有化されてしまっているので、再度、再開発をする(以下、再々開発)際に、合意形成がますます困難になることが容易に想像できるからです。
近年、全国各地の自治体で積極的に取り組まれている再開発ですが、それによって駅前など重要なエリアの土地や建物の共有化・区分所有化がますます進んでしまっています。
将来世代が「使えない」「変えられない」状況を今、私たちが何の工夫もしないままつくり続けてよいのだろうか、という点も都市政策の重要な論点です。
これまでの延長線上で考えるのではなく、そろそろ本格的に、人口減少時代に対応した新しい事業手法の構築も含めて議論すべきと考えます。
「買えない物件」と
「買いたくない物件」
住宅価格高騰というイメージの一方で、ここ10年の1都3県(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)の中古マンションの在庫数やその築年数の推移について分析してみると、非常に興味深い結果が明らかになりました。
1都3県では、10年前に比べて、確かに新築マンションの供給数は半減しています。その一方で、住宅市場に新規に登録される件数の推移を見てみると、中古マンションや新築・中古戸建は10年前と同等、あるいは地域によっては増加しているのです。
つまり、コロナ禍という特殊な時期を除けば、住宅の量が、世帯数の増加に比して圧倒的に不足している状況ではないのです。
では、なぜ、市場に住宅の「量」として十分に出回っているにもかかわらず、住宅の入手困難さを感じている人が多いのでしょうか。
それは、あまりにも高額となり過ぎて「手が出ない住宅」と、古い・立地が悪いなどの理由で「手を出したくない住宅」ばかりが増加し、今の住宅実需層のニーズに合わなくなっていることが大きな原因だと考えています。
現に都心3区(千代田区・中央区・港区)を除く1都3県の中古マンションについては、在庫の築年数平均が2014年時点は築18~22年程度でしたが、2024年には築26~32年程度になっており、総じて「在庫の中古マンションの高経年化」が進んでいます。