
古い一軒屋が解体されると跡地に2~3軒のミニ戸建が現れるのは、都内の住宅地の日常風景だ。このような「極狭小の建売住宅」は、止まらない地価の上昇に対する不動産会社の「苦肉の策」といえる。こうして、将来、使いにくい土地や建物が生み出されることに歯止めをかけられない状況にある。※本稿は、野澤千絵『2030-2040年 日本の土地と住宅』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
地方都市でも進む
都市再生の取り組み
都市再生の取り組みは、首都圏の1都3県や、3大都市圏の名古屋市、岐阜市、京都市、大阪市、堺市、神戸市だけではありません。札幌市、仙台市、新潟市、福井市、岡山市、広島市、高松市、北九州市、福岡市、長崎市、那覇市などの地方都市でも行われています。
その中でも特に、札幌市から恵庭市・千歳市に至るエリア(図表1-3)や福岡市から筑紫野市に至るエリアは、市街化区域の全ての調査地点で10年前より地価が上昇しましたが、特徴的なのは鉄道駅から徒歩圏外であっても上昇している点です。これは、車による移動が多いライフスタイルであることも関係しているものと考えられます。

一方で、図表1-3のとおり、札幌市から少し離れた小樽市、当別町、南幌町、長沼町などの市街地では、ほとんどの地点で下落しており、札幌市への開発・人口の一極集中が一層進んだことがわかります。
鉄道駅から徒歩圏外では
地価は下落傾向
もう少し詳細に分析するため、鉄道駅から概ね10分程度の徒歩圏(800m圏)と重ねてみました。
その結果、鉄道網が発達している大都市圏では、駅から徒歩圏内の調査地点のほとんどで地価が上昇しましたが、駅から徒歩圏外のエリアでは、明らかに地価の下落している地点が多いという特徴が見られました。