定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

【税理士が教える】「知らないと損! 医療費控除で税金を取り戻す“3つの裏ワザ”Photo: Adobe Stock

グレーゾーンの多い「医療費控除」

 医療費控除もちょっとした工夫をすることで、節税できる額が変わってきます。

 まず知っておきたいのは、医療費控除は、家族の中で一番たくさん税金を払っている人(所得税率の高い人)が、家族の分をまとめて控除するべきだということです。

 医療費控除は、10万円(もしくは所得の5%)を超えた部分だけが控除されます。

 仮に、3人の家族がそれぞれ12万円ずつ医療費を使っていた場合、ばらばらで申告すると、それぞれ10万円を超えた部分しか対象にならないため、12万円-10万円=2万円ずつしか医療費控除の対象になりません。

 これを1人にまとめれば、36万円-10万円=26万円が対象となります。

 このように医療費控除できる金額が増える上に、一番所得税率の高い人がまとめて申告することで、より戻ってくる税金が増えるということです。このケースであれば最大13万円もの違いになる可能性もあります。

 扶養家族や同居の人の分しかまとめられないと思っている方もいますが、そんなことはありません。生計が一の家族(配偶者であれば働いていても基本OK。一緒に住んでいない子や親でも、仕送りをしていればOK)の医療費であれば、まとめて医療費控除できます。

高額な医療費を無駄にしない2つの工夫

 医療費控除の上限は年間200万円までです。インプラントや歯列矯正、また保険のきかない先進医療などで、医療費が高額になると、引ききれない分が無駄になることがあります。

 そんな時にもちょっとした工夫で医療費の枠を増やすことができます。

 たとえば、夫が400万円のがんの先進医療などを受けたような場合、夫が1人で400万円負担すると上限の200万円までしか医療費控除の対象になりませんが、夫妻で半分ずつ医療費を負担すると、それぞれ上限の200万円まで医療費控除が受けられます。

 医療費控除は、医療を受けた人ではなく、医療費を負担した人が受けられる控除なので、これが可能なのです。

 医療費の負担を分け合える家族がいない場合は、「支払日をずらす」という方法があります。

 医療費を控除する年は、治療を受けた日で判断するのではなく、支払った日で判断します。

 病院が分割払いを受けてくれれば、引ききれない分を翌年に支払うことで、それぞれ支払った年の医療費として控除することができます。

 ただし、クレジットカードで払った場合医療費控除を受けるのは、クレジットカードで支払った日となり、分割払いにはなりませんのでご注意を。

*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。情報は本書の発売時のものです。