フードコート展開で
思わぬ大ヒットに

 外的要因で業績が上下する可能性があるならば、焼き鳥屋一本でやっていくのは厳しいだろう。そう考えて計画を練り直す必要に迫られていた矢先、ショッピングモールのフードコートへの出店依頼が舞い込んできました。当時は、大型のショッピングセンターが増加傾向にあったのです。

 私はフードコートのことをよく知らなかったので、依頼をしてくれた方にどんな場所か聞きました。

 すると、「言ってみれば、繁華街の四つ角みたいな場所」だというではありませんか。集客はショッピングセンター自身でやってくれるのです。しかも、店面積も小さく、出店資金もそんなにかからない、と。そこで、ほそぼそと続けていた丸亀製麺を、フードコートに出店してみることにしたのです。

 当時のフードコートというと、店頭で見えるように調理しているのはたこ焼き屋くらいで、他は店内後方のキッチンで作ったものを出す店が多かった。そこに丸亀製麺は、製麺機を持ち込んで、打ち立て・茹でたてのうどんを出しました。

 フードコート側からは「そこまでしなくてもよいのでは?」と言われましたが、丸亀製麺の売りは製麺所の風情ですから、変えられなかったのです。

 そうしたら、これが大ヒット。まだこうした業態が珍しかったこともあり、まるで本場香川の製麺所のような長蛇の列ができたのです。

 うどんがこんなに売れるのであれば、他の業態もいけるのではないか。そう考え、店頭調理という共通点をもたせたラーメン屋と焼きそば屋を次々と出店しました。1つのフードコートで複数業態を同時展開することで、トリドールの業績を急角度で上げていくことができたのです。「一度でも断るともう出店依頼が来ないのではないか」という不安もあり、来る話すべてに飛びついていたのがこの頃です。

フードコート出店をきっかけに
「多業態」「全国展開」スタイル確立

 フードコートに出店するまで、関西から出たことがなかったトリドール。それが2年でさまざまな地域から出店オファーが舞い込み、関東はもちろん、北海道や九州にも店を持つことになりました。