丸亀製麺Photo:Diamond

“いつでもどこでも、ひとりで気軽に呑める店”をコンセプトに、今や関東No.1の店舗数を誇る立呑み酒場「立呑み 晩杯屋」。この晩杯屋に客として通い、魅力に気づいて買収&店舗展開した著者が語る、今後のヒットする居酒屋形態の秘訣とは――。本稿は、粟田貫也『「感動体験」で外食を変える 丸亀製麺を成功させたトリドールの挑戦』(宣伝会議)の一部を抜粋・編集したものです。

アイデアひとつで
売り上げが倍増する外食事業

 私は外食産業で夢を持てば大きなことをなし得ると伝えていきたい。ビジネス的にも、外食事業は特に商売の醍醐味があっておもしろいと考えています。アイデア1つで、これまでにない業態を生み出したり、既存店の売上を倍増させたりすることができるからです。

 自分がお客様側になる機会が多いのも、外食産業の特徴です。近年、トリドールでは国内の業態をM&Aでグループ化しています。その1つが立ち呑みの「晩杯屋」です。この買収は、私自身が晩杯屋の客として通っていたところからスタートしています。

 トリドールは焼き鳥屋から始まった会社ですから、私は居酒屋という業態に思い入れがあり、その変遷を興味深く見つめてきました。お酒と食べ物を出す気軽な店としての居酒屋は、そう呼ばれる以前から個人店として存在していたでしょう。

 1960年代には、日本で初めての居酒屋チェーン「養老乃瀧」がフランチャイズ第1号店を出します。その次に出てきたのが「村さ来」。さまざまな種類の酎ハイをメニューに揃え、1980年代には酎ハイブームが起きました。

 1978年には「つぼ八」がフランチャイズチェーン展開を開始し、これらの店が居酒屋を中高年男性だけでなく若者や女性も楽しめる場にしていきました。

ライフスタイルと共に変わる
居酒屋の利用の仕方

 同時期に台頭してきたのが「天狗」です。「天狗」の創業者はイギリスのパブやドイツのビヤホールを参考にした洋風の店をオープンし、それが元となって焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーなど幅広いお酒と和洋折衷の料理を提供する、今日のチェーン居酒屋の原型ができあがっていったのです。私の世代だと「天狗」といえばサイコロステーキが思い浮かぶ人が多いと思います。こうした名物料理があるのも、人気のある居酒屋チェーンの特徴です。

 その後「和民」「土間土間」「甘太郎」「白木屋」「魚民」「笑笑」などさまざまな居酒屋チェーンが登場し、1990年代後半からは「鳥貴族」の勢いが増してきます。