ここで、「丸亀製麺は全国チェーンになれるんと違うか」という野心が頭をもたげてきました。丸亀製麺はセントラルキッチンがありません。だからこそ、全国どこでも出店できる。

 これがもし関西に工場を持っていたら、そのエリアでドミナント出店(特定の地域に集中して出店すること)をしていたでしょう。そのほうが効率がいいからです。一見非効率な店舗での製麺というスタイルが、短期間での全国出店を可能にしたのです。

 フードコートへの出店をきっかけとして、現在のトリドールにつながる「多業態」と「全国展開」というスタイルが確立されていきました。

 こうして2006年、当初の計画から2年遅れで上場を果たしました。1999年に、上場基準を緩和して成長性が見込まれるベンチャー企業に株式上場による資金調達の場を提供するため「東証マザーズ」が開設されたことも幸運でした。まずは、この東証マザーズに上場したのです。

 フードコートでの出店が勢いづく中、2006年にはそれにストップをかけるような事態が起こりました。都市計画法・建築基準法の改正です。商店街のシャッター街化などの問題を受け、大型商業施設の出店に際し、立地条件にある程度の抑制がかけられるようになったのです。

 この改正の影響は、後から振り返ればそこまで大きくありませんでした。しかし当時の私は、これから大型ショッピングセンターの新設が激減し、フードコートへの出店ペースがガクッと落ちるのではないか、という恐怖に苛まれました。

競合他社を引き離すべく
ロードサイド中心に出店加速

 そこで出店計画を見直し、もう一度ロードサイドに店を作っていく方針を立てました。

 丸亀製麺はすでに、ロードサイド店がある程度成功していたので、フードコートで出していたラーメン屋や焼きそば屋もロードサイド店を作ってみたのです。

 しかし、丸亀製麺ほどはうまくいかない。それならば、と丸亀製麺に集中して店を展開していくことにしました。2006年には、ロードサイド店だけでなく都内のオフィスビルなどにも出店し、国内100店舗を達成しました。