雅美さんの声には20年間の苦悩が込められていました。
拳をぎゅっと握り締めた雅美さんは小さな声で続けました。
「夫が20年も複数の女性と不倫していることに我慢してきました。仕事が長続きしない夫は職場が変わるたびに、手当たり次第に同僚の女性と関係を持っていたようでした。夫の服には私とは違う女性の髪の毛が付いていたり、下着から香水の匂いがしたり、疑う証拠はたくさんありました。
社長の奥様にも手を出してクビになることも一度や二度ではありませんでした。生活のこともありましたが、娘のために家族を壊したくなかったんです」
声を震わせながらも、母としての責任感が彼女を支えていたんだと感じました。
調査対象である夫・遠藤巌(52歳)は、京華さんが生まれた直後の20年前から複数の女性と不貞を重ねてきたそうです。雅美さんはそれを知りながらも、京華さんのために我慢してきました。しかし、成人した京華さんの「お母さん、もうあいつのことで我慢しないで!あいつと離婚して2人で暮らしたい!」という言葉が背中を押し、ついに離婚を決断したのでした。
娘が目撃した父の不倫
娘の報告に母は……
雅美さんの情報によると、調査対象者である遠藤巌の現在の不倫相手は、職場の同僚・水口佐世子(45歳・既婚)とのことでした。
京華さんが高校の帰りにたまたま仕事終わりの対象者が女性と歩いているところを見かけ尾行すると、ラブホテルへ入っていく姿を目撃したのです。
それは2年9カ月前のことでした。
その後、ラブホテルから出てきた2人を尾行し続け2人が別れた後、女性の自宅を確認しました。表札から女性が水口佐世子であることを知りました。
京華さんは怒りとともに雅美さんに全てを伝えましたが、雅美さんは「嫌な思いをさせてごめんね」と京華さんに泣きながら謝るばかりでした。
雅美さんがこれまでずっと我慢し続けてきたことが、京華さんのためであったのを知ったことで、京華さんは母を守れるのは自分だけだと感じ、独自に水口佐世子のことを調べ始めたそうです。といっても探偵の調査方法など知らない京華さんは、学校の行き帰りや休日の限られた時間で水口佐世子の動向をうかがうことしかできませんでしたが、たまたま休日出勤した水口佐世子が対象者と同じ職場であることを突き止めたのです。