不倫相手を知った時から3年が経過するまで、あと2カ月と10日しかないため、浮気の証拠写真を撮るべく迅速に調査を開始しました。

 雅美さんからは「夫はとても猜疑心が強く、常に周りを気にしています。それは年を重ねるごとに強くなっています。なぜかはわかりませんが、日頃からそういう人なんです。ですからくれぐれも用心してください」との話があり、私はより慎重に慎重を重ねる気持ちで調査に臨みました。

「俺のことを調べているのか?
全てわかっているぞ!」と夫からの連絡

 1回目の調査では、対象者が仕事を終えた後、建設現場から寮へ直帰し、特に動きはありませんでした。

 2回目の調査でも建設現場から寮へ帰宅しました。しかし、約1時間後に寮を出た対象者は最寄り駅前のコンビニに入り、雑誌を20分ほど立ち読みした後、商店街をぶらつき、弁当を購入して帰宅しました。

 その行動自体は何の変哲もありませんでしたが、不自然なほど周囲を気にしている様子だったのです。時折背後を振り返ったり、店のガラスに自分の姿を映したり、後方の様子を何度も確認していました。

 帰宅して2時間後、動きがなかったため調査を終了するか相談しようとしたときに、雅美さんから電話がかかってきました。

 雅美さんの声は慌てて震えており「さっき夫から電話がかかってきました!俺のことを調べているのか?全てわかっているぞ!と言い放つと、一方的に電話を切ったんです!」。

 私は、対象者が警戒しているような行動はあったが、こちらを特定している様子はないことを伝えました。雅美さんはこれまでに対象者から幾度となく鎌をかけられたことがあるようで、今回もそうかもしれないということで落ち着きました。

 2回目の調査はこれで終了して、次回は対象者の警戒心を収めるために1週間以上の間を空けて、尾行が露見しないよう遠隔カメラや人員の配置を調整して、さらに慎重度合いを高めることにしました。

 10日後の週末金曜日に3回目の調査をしました。雅美さんの考察では金曜日に違和感を覚える写真が多いこともあり、建設現場からではなく、寮に帰ってくる対象者を待ち受けることにしました。

 大体の帰宅時間は18時前後でしたが、この日は19時を過ぎても帰ってきませんでした。20時前、対象者の寮に1人の女性が入っていくのを確認しました。その30分後、対象者が帽子を目深にかぶり、周囲を警戒しながら帰宅しました。

 最寄りの駅で待機していた調査のパートナーからの報告では、駅の改札から出てきた対象者を見つけ、いつもの倍くらい距離を空けた尾行中に、対象者は何度も後ろを振り返ったり、立ち止まってスマホで通話しながらゆっくりと歩いたり、尾行を警戒した動きがあったことから、先に寮に入った女性は水口佐世子の可能性が高いと感じました。