対象者は雅美さんと京華さんの態度から、家庭内の不穏な空気を察知したのか、突然仕事を変え、翌月には単身赴任を理由に群馬県の建設会社の寮へ移り住んだのです。

 毎晩のように雅美さんへ電話をかけてきては「俺が不倫していると思っているんだろう」「俺はなんでもわかっている」「別れるつもりはない」「俺を調べても不倫の証拠は出てこない」と、まるで牽制するかのような発言を繰り返してきました。

 さらに、潔白であることを証明しようと思ってか、寮の部屋に1人でいることを示すスマホで撮影した写真を頻繁に送ってきました。その多くは上半身裸でリラックスしている姿を写したものでした。

 しかし時々、いつも散らかっているはずの部屋が妙に整理整頓されていたり、背景が極端に狭い範囲しか写らないアップの構図だったりする写真から、雅美さんは違和感を覚え、水口佐世子が来ていると確信めいた疑念を感じました。

 高校を卒業してビジネスホテルの受付として働いていた京華さんは、対象者が家からいなくなったことで平穏な暮らしを満喫していましたが、雅美さんの苦悩の表情が気になったため状況を聞くと、「お母さん、もうあいつのことで我慢しないで!あいつと離婚して2人で暮らしたい!」と叫んだのです。

 決意の固まった雅美さんは、不倫調査を依頼するため、私に連絡をくれたのでした。

浮気・不倫の慰謝料請求には時効が
3年と20年の違いとは?

 私はまず、浮気・不倫の慰謝料請求には時効があることを雅美さんに伝えました。配偶者の不貞行為および不倫相手を知った時から3年を過ぎると時効が成立するのです。

 ちなみ「不倫相手を知った時」とは、不倫相手の名前や住所などを特定できている状態を指します。

 不倫相手の顔を知っているだけでは、3年という時効期間のカウントは開始されません。

 また時効の条件として、「不貞行為があった時から20年間」もありますが、原則短い方が適用されます。