いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

職場の「やる気を奪う上司」の残念な特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

内なる炎を燃やす

炎が勢いよく飛び出せば、鎮火はおろか、閉じ込めたり勢いを衰えさせたりすることもできない。
わたしたちの魂も同じように絶えず動いており、強く熱を帯びるほど、その動きや活動が盛んになる。
幸福なのは、その魂によりよいものへと向かう衝動を与えた人だ!
(セネカ『ルキリウスに宛てた道徳書簡集』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

やる気に燃えているとき

 基本的にあまりやる気のない人間である私も、仕事や趣味に没頭して「やめられない状態」になることがある。寝る時間を削ってもやりたい。人に咎められそうだったら、こっそり隠れてでもやり続けたい。

 情熱の炎が燃えているので、簡単に消せないのである。そういうときは明らかに成長のスピードが速い。もしかしたら慎重さを欠いていて失敗は多いのかもしれない。でも、失敗があまり気にならず、「じゃあこっちだ」と別の方法に切り替え、前進するから速いのだ。

 だが、そんなにしょっちゅう燃えているわけではない。むしろなかなか火がつかずダラダラしていることのほうが多い。モチベーションのコントロールは難しいものだ。

どんなときに「モチベーションMAX」になる?

 では、どういうときに人はモチベーションMAXになるのだろうか。

 大きく二つあると思う。

 一つは、「知りたい」とき。面白くて、先が知りたくて、やめられない。自分の仕事でも、たとえば宇宙論に関する原稿を書いたときなどは「もっと知りたい、わかりたい」という気持ちが強くてやめられなかった。 

 新しい分野の勉強、新しいことへのチャレンジに対しては気持ちが燃えやすいと考えられる。 

 もう一つは、「誰かが喜んでくれるのをイメージできる」とき。たとえば、友人に楽しんでもらうためにボードゲームの予習をしたり進行を考えたりするときは、作業に没頭できる。「この展開できっと驚いてくれるぞ」などと思うとワクワクが止まらない。

 つまり、慣れていることであっても、それをすることで誰かが喜んでくれる姿を明確にイメージできれば、やる気に火がつくと言えそうだ。

あなたの上司はチャレンジさせてくれるか?

 反対に、あまり知りたいと思わないこと、慣れていることはやる気スイッチが見つからない。

 会社でも、チャレンジを避け、同じことばかりをさせようとする上司が力を持っていると、部下は次第にやる気を失っていく。

内面を掘り下げて、言葉にする

 ストア哲学者のセネカは、「幸福なのは、その魂によりよいものへと向かう衝動を与えた人だ!」と言っている。

 ストイシズムの考え方では、幸福で満ち足りた人生を送るためには、美徳を育み人格を高めることこそが大事だ。よりよい人間になりたいという情熱に燃えている人が幸福なのだということだろう。

 モチベーションのコントロールは簡単ではないが、自分の内面と向き合うことで上手になっていくに違いない。

 本書は、セネカはじめストア哲学者の言葉を読みながら、自分の内面を掘り下げて言葉にすることをすすめている。あなたもぜひやってみてほしい。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)