なぜジャニーズを報じなかったのか?
新著で論破されたメディアの「言い訳」

●報道したかったが、事実が確認できなかった

 週刊文春の例を見れば、取材には膨大な手間と時間がかかっています。しかし、これはメディアが報道しなかった理由にはなりません。喜田村弁護士は以下のポイントを指摘します。

(1)「自分たちで報道しようとした」と名乗り出たメディアはない。

(2)自社による確認が難しくても、2003年の高裁判決、04年の最高裁判決をもとに「ジャニーズ判決は何を教えてくれるか」との評論を書くことはできたはずだが、それもほとんどなかった。

 少なくとも、事実だと確認された内容に従って評論を書き、読者・視聴者に別の視座を与えることはできたはず。そんなメディアに「事実確認ができなかったから報道できなかった」という言い訳はできません。つまり、この仮説は成立しないのです。

●最初に報じたのが週刊誌だったから

 多くのメディアが「週刊誌レベルの話は、ウラがとれない怪しい情報」と考えている。しかし、裁判所が認定した以上、その論理は通用しません。

●みんなが報道していないから、うちでも報道しない

 メディアの中には、「自分たちはエスタブリッシュな存在」と自認している組織が存在します。彼らは、警察、検察、その他官公庁内に人脈を持ち、記者クラブでもらう情報を報じつつ、他社と対峙する報道も行っています。しかし、官公庁からの情報をフォローするだけで、当局が捜査に動かなければ報道しないという姿勢は、国民に対する裏切りです。

 ジャニーズ問題はエスタブリッシュされていない(とみなされている)週刊誌の報道であり、当局の判断が先行しなかったから報道しなかったという過去の幹部の説明は、とても正当化されるものではありません。