仕事熱心で、土日も事務所に出勤しているので、やはり土日も出勤することが多い『週刊文春』の関係者にとっては、本当にありがたい存在です。仕事終わりに「飲みに行きましょう」と誘うと、まず断られません。そして深夜まで強い酒を飲み干す、酒豪でもあります。正直、『週刊文春』は喜田村弁護士の存在のお陰で、ジャーナリズムとしても成長したといっても過言ではありません。

喜田村弁護士が教えてくれた
「裁判で絶対に負けない法」

 さて、読者諸氏の中に、法廷に立った経験がある人は少ないでしょう。私は何度も経験しましたが、そのテクニックも喜田村弁護士に教わりました。

 法廷で証言する場合、自社側の弁護士から受ける尋問は、事前準備もしているので、まあ安心です。しかし反対尋問となると、相手側の弁護士から相当厳しいことも聞かれますし、緊張して記憶が曖昧になるときもあります。

 私の場合は関西人なので、「早口がネックになる」と先生に指摘されました。反対尋問は時間が決まっているので、相手にたくさん質問させないことが大事です。ですから、「ゆっくり答えて、尋問項目を減らしましょう。そして細かい点は、忘れたふりをして、弁護士に確認を求めればいいのです」というのが、先生のアドバイスでした。そうすると、弁護士が資料を法廷に持ち出し、証言台のところまで持ってきてくれて、「甲何号証を示します」と資料を見せてくれます。わざとゆっくり物事を進めるのです。こんなテクニックも随分教わりました。

 一度喜田村弁護士に、日本テレビ系のバラエティ番組『行列のできる法律相談所』(現『行列のできる相談所』)が始まったばかりの時期に、「あの番組に出ている弁護士事務所は、本当に行列ができているんでしょうか?」と聞くと、「出演している弁護士のことは全然知りませんが、行列ができるということは、法廷が多いということ。法廷準備の時間も考えると、とてつもなく能力の高い弁護士さんたちなんでしょうね」と言われたことがあります。

 ジャニーズ裁判でも松本人志裁判でも、テレビは独自の取材をせず、レギュラー出演する弁護士たちのコメントに頼ってばかりいました。しかし、テレビに出る弁護士(だけでなく、医者、学者、出版社の編集長もそうですが)は、そういう視点で見ておく必要があると思います。弁護士の場合、名誉棄損などの法廷経験がない人が多く、テレビ局に都合の良い芸能事務所寄りのコメントをする人が多いことも、読者諸氏は知っておいてください。

(元週刊文春・月刊文藝春秋編集写真長 木俣正剛)