●芸能界で起こった出来事だったから
芸能界の内部は取材がしにくい。「芸能界では昔からこういうことがあったのではないか」「小さい世界での悪癖は、ことさら取り上げることではない」という判断がメディア内部にあったことも事実です。この論理は民放連が自ら定めた「人権に関する基本姿勢」で「社会的弱者やマイノリティ、未成年の人権に配慮し、尊重する」という基本精神にまったく反しています。つまり、この論理も、また通用しないのです。
被害者が少女でも
メディアは黙っていたか?
●少年に対するハラスメントであったから
この仮説の意味は、被害者が少女であり、芸能プロダクションの男性社長がハラスメントを行ったと仮定して考えると、よくわかります。相手が少女であればどの社も報じない理由がないし、メディアが少女に対する性加害を報じた例は過去に何度もあります。相手が少年であれば、「それがハラスメントにならない」、あるいは「大したことではない」という認識で報じなかったとしたら、人権に対する認識不足としか言いようがありません。
ただ、2000年代当時の文春の報じ方が、「ホモセクハラ」という今日では使われにくい表現であり、単なるいたずら程度に認識されていた可能性はあります。しかし、だからといってメディアが報じない理由にはなりません。
●報道すると各種の不利益が出るから、取り上げない
報じなかった事実を証明することも正当化することもできない以上、残る理由として浮上するのは、報道により自社に不利益が生じると考えたからというものです。これについては文春側が、広告などに圧力があり不利益があったことを主張しており、ジャニーズ事務所の対応を見ても、明らかにメディアは報道した場合の報復を恐れた可能性が高いと想像できます。
ジャニーズ事務所は問題が大きくなってから、調査委員会を発足させました。この調査報告は、「ジャニーズ事務所は、ジャニー氏の牲加害について、マスコミから批判を受けることがないことから、(略)自浄能力を発揮することもなく、その隠蔽体質を強化していった(略)」と結論付けています。