【知らないとアウト】今の「親ガチャ・弱者男性」と昔の「勝ち組・負け組」。その意味するものが根本的に異なる理由とは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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まるでかつての「身分制度」
二極化と格差社会が加速する。
すると、「持つ者」と「持たざる者」の間で社会の分断が進みます。
こういった状況では、社会への不満が溜まった人々を強い言葉で煽って自分の票に変えようとするタイプの政治家(ポピュリスト)が人気になることが多いです。
そして、内乱・紛争が増えていき、治安は悪化していきます。
これは実際にアメリカやヨーロッパで今起きつつある現実です(この話を聞いて、ある強烈な個性の政治家を思い浮かべたはずです)。
先進国で経済格差が広がると、それがそのまま「教育」や「チャンス」の格差に直結します。
裕福な家庭では、子どもを塾に通わせ、いい学校に進学させるための投資が簡単にできるため、子どもたちも、いい教育を受け、就職のチャンスにも恵まれます。
一方、経済的に厳しい家庭では、教育への投資が難しく、奨学金の負担を抱えながら勉強するため、進学や就職の選択肢も限られてしまいます。
このようなサイクルが数世代も続くと、経済的な差が固定化され、まるでかつての「身分制度」のように、越えにくい壁となって個人に立ちはだかるのです。
人生は「ガチャ」なのか
「親ガチャ」や「弱者男性」といった言葉をSNSでよく見かけるようになりました。
以前から、「勝ち組」「負け組」といった表現はあったと思います。
これらは、努力による結果としての「勝ち負け」を指していました。
それに対して、「親ガチャ」や「弱者男性」という言葉は、その人の「生まれ持った環境や属性」を含んだ表現になっていると言えます。
経済格差の固定化が進む中で、こうした言葉には、どこか「もうどうにもならない」という諦めのニュアンスが含まれているように感じられます。
「この二極化した超格差社会でどう生きていけばいいのか?」
その指針が求められています。
何も考えず、ただひたむきにがんばるだけで何とかなる状況ではありません。
とはいえ、「何をやってもムダだ」と諦めてしまっても、実家が裕福な人以外は生きていけません。
どちらの道を目指せばいいのか。
その道筋が見えず、現実から逃げることも難しい……。
そんな複雑な状況が世界中に広がり、「閉塞感」として全世界を覆いつつあります。
私も以前は、「閉塞感」を抱えていた一人でした。
コロナ禍以前、私は腰を落ち着けて何かにじっくり取り組むことができずにいました。
ひたすら世の中のトレンドを追うだけの日々を過ごしていたのです。
そんな中、コロナ禍が始まり、社会が自粛モードに突入しました。
この「一休みモード」のおかげで、私は、ようやく自分の時間を確保し、新しい技術を、腰を据えて学ぶ機会を得たのです。
コロナ禍の約3年間、これからの10年、20年先を見据え、必要なスキルや知識を見極めることに集中しました。
そして、不要な価値観を捨て、真に必要な知識を身に付けるべく、自らを見つめ直したのです。
気がつけば、自粛期間を経た自分は、「仮想現実」と「宇宙開発」という、まったく異なる分野の新たな専門家になっていました。
一方で、私の周りでは、釣りやキャンプ、別荘暮らしなどのスローライフを謳歌して「がんばらなくていい」と語る人が増えていました。
堕落しようと思えばいくらでも堕落できてしまうものです。
だからこそ、「自分を律する力が必要である」と確信していたのです。
同世代や先輩たちが一気に活動をやめたコロナ禍の自粛期間は、私にとっては競争に晒されることなく自分を磨き上げることができた最高の「ボーナスタイム」でした。
そのときの私の行動が、まさに「ゆるストイック」を体現していました。
今、周囲には社会の変化についていけず、早期引退を余儀なくされたり、「働かないおじさん」になってしまったり、ポジションを失ってしまった人たちを見ることが増えました。
だからこそ、今の時代においては、「自分を律するストイックさ」と、他人と違う考えを許容し干渉しない「寛容さ(ゆるさ)」という、相反するような価値観を同時に持つことが強さに直結するのです。
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。