第一三共が新薬開発試験の失敗で株価暴落、絶対に避けたい「7月12日の最悪シナリオ」とは?4月から第一三共のCEOに就任する奥澤社長  Photo:医薬経済社
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 第一三共の株価が冴えない。24年8月末に昨年来最高値の6257円を更新して以降、上昇の兆しは見えず、2月には4000円を下回るようになった。一方、業績は好調だ。25年3月期第3四半期(24年4~12月)の売上収益は前年同期比16.6%増の1兆3675億円、コア営業利益も33%増の2290億円。通期は2ケタ台の増収増益を見込む。

 それでも株価が上がらない要因が、最近、日米で承認を得た期待の抗がん剤「ダトロウェイ」に関して、開発戦略上の変更を余儀なくされたことにある。株価のさらなる下落を招く爆弾になるか、それとも起爆剤となるか、この新薬の行方が重視されている。

 ダトロウェイは第一三共の主力製品「エンハーツ」に続く抗がん剤だ。エンハーツを生み出した同社の抗体薬物複合体(ADC)の創薬技術基盤から創出された2番目の抗がん剤で、次なる「ドル箱」として期待がかかる。

 第一三共の業績はエンハーツが牽引してきた。第3四半期のエンハーツの売上高は46.5%増の4044億円。半分を稼ぐ米国市場では35%増で、乳がんや胃がん、肺がんの適応で新規患者1位を維持し、高い評価を得ている。欧州では69%増、日本でも33%増と絶好調で、24年度には世界で売上高5000億円以上を見込む。日本の製薬企業でこれほどの「売り」を立てられる新薬は多くない

 さらに、もうひとつの稼ぎ頭である抗凝固剤「エドキサバン」(一般名、日本製品名はリクシアナ)も、24年度予想は3000億円を超す勢い。ただ、エンハーツやエドキサバンが好調なのは想定済みで、残念ながら株価を上げる材料にはなっていない。関心は次なる新薬にある。