「自分の仕事に足りないことを全部言語化してくれる本」「会社員人生が180度、変わった!」
そんな感想が届いているのが、安藤広大氏の著書『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』シリーズ三部作だ。これまで4400社以上の導入実績があるマネジメント法「識学」をもとに、ビジネスの現場で「一生活躍し続けられる」メソッドや思考法を授ける本シリーズは、さまざまな業界から圧倒的な支持を集めている。今回は、全ビジネスパーソンに必須の「意思決定」のあり方を指南する、シリーズ最新刊『パーフェクトな意思決定 「決める瞬間」の思考法』の中から、特別に本書のエッセンスを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

仕事ができる人ほど頻繁に口にする「カタカナ語」とは?Photo: Adobe Stock

起業したときの正直な気持ち

「理論」は偉大です。そのとおりに実行ができれば、必ず成果が出るからです。

 しかし、そこには限界があります。そんな話をしましょう。

 これまでの私の本でも、「理論」を前提とした話をしてきました。
 必要に応じて、バイアスなどの知識についても共有しました。

 ただ、「意識し続けること」を強いるには限界が出てきますよね

 私自身、26歳のときに大企業を辞めました。

 また、35歳のときには起業しました。

 このとき、もちろん「理論」で考えた部分はあります。

 ただ、それが100%かというと、そうも言い切れないのです。
「ここから先はわからない」という壁が出てきます

 リスクを取らないといけない領域があるのです。

「精神論でしかない」という部分

 ここで、「不確実性」というキーワードが大事になってきます。

 この記事を読んでいる人は、おそらく慎重な性格の人が多いのではないでしょうか。
不確実性からは逃げられない」ということは何度繰り返しても足りないくらい、説明しないといけない。

 できるだけ精神論を排除しても、「ここは精神論でしか語れない」という部分に行き着きます。

 意思決定は、ある程度までは「理論」で考えることができます。

 しかし、最後の最後は「勇気」の部分が残ってしまうということです

「やってみないとわからないところがある」という諦めの気持ちを認めないといけない。
 私が大企業を辞めたり、起業したりしたときの正直な気持ちを語ると、

このまま動かないことのほうがリスクだ。でも当然、確実にうまくいく確証はない。だから最後は勇気を出して決断するしかない

 と思ったのです。
 誰かに言われたわけではなく、自分でそう考えた。
 そうとしか考えられなかった。

 だから、動いたのです
 もちろん、一時的に安定した給料を手放すことにはなります。

 しかし、そのリスクを負ってでも大きなリターンを取りに行きました。

 その結果、「識学を1日でも早く社会に浸透させたい」というビジョンが定まりました。
 それに向けて自分が動かないほうがおかしいと思えた。それが正直な気持ちです。

「意思決定の真実」について

 何かを決めた後は、実行するフェーズに移ります。
 その上で、触れておかないといけない勘違いがあります。

 先ほど、私の転職や起業の話をしました。

 どんな人にも、「あのとき、あれがターニングポイントだった」という瞬間があると思います。

 一か八かだったけど、やってみてよかったと思える瞬間。
 それは誰にでもあるでしょう。

 では、本当にそれは「決める瞬間」が大事だったのでしょうか。
 じつは「決めた後」が大事だったのではないでしょうか

 こんなことを書くと、パーフェクトな意思決定というテーマを否定しているように思うかもしれません。

 しかし、それでも真実を語らないといけない。

 そう……、決めることが大事です
 ただ、決めた“後”も大事なのです

 それを理解してもらった上で、「勇気」という精神論をはじめて語ることができるのです。

「ターニングポイント」の実態

 先ほど使った、「ターニングポイント」という言葉には、ある特徴があります。

 それは、「後から決まる」ということです
 最初の意思決定の段階では、まだターニングポイントかどうかはわからない。

 そこには時間が必要になります。
 その後の実行によって、その意思決定に「意味づけ」がなされるのです。

 仕事ができる人ほど、「ターニングポイント」というカタカナ語を使います

 うまくいったら、「あれがターニングポイントだった」と意味づけをして、堂々と語る
 失敗したなら、次に生かすように、修正をして、それも堂々と語る。
 それが正しい順番です。

 世の中にある成功物語は、突き詰めてみると、ほとんどこの構造でしょう。

 もちろん、情報を見極めることは必要です。
 失敗を想定してシミュレーションすることもやるべきです。

 しかし、最後の最後は「勇気」だけが残る
「あとは実行して、何とか成功に持っていくしかない」という真理に達するのです。

(本稿は、パーフェクトな意思決定の著者・安藤広大氏が書き下ろしたものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。2002年、早稲田大学を卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングス、ジェイコム取締役営業副本部長を経験。プレイングマネジャーとして「成長しないチームの問題」に直面し悩んでいたときに「識学」に出合い、2013年に独立。多くの企業の業績アップに貢献した。2015年、株式会社識学を設立。わずか4年足らずで上場を果たし、これまで9年間で約4400社に識学メソッドが導入されている。著書にシリーズ累計150万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(ダイヤモンド社)がある。『パーフェクトな意思決定』はシリーズ最新刊。