質問にハッキリ答えられないとき、感じの悪い人は「たぶん」「おそらく」と言う。感じのいい人は何と言う?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

質問にハッキリ答えられないとき、感じの悪い人は「たぶん」「おそらく」を連発する。感じのいい人は何と言う?Photo: Adobe Stock

「あいまい言葉」は不快

 何気なく使った言葉が、相手に思いがけない不安感を与えることがあります。
 その一例が「あいまい言葉」と呼ばれる、「たぶん」「おそらく」「もしかすると」といった表現です。

 最近、あるサービス業の研修でこんなエピソードを聞きました。

「『おそらく来週には入荷すると思います』とお客様に伝えたところ、『おそらく…なんですか? では、来週まで待っても購入できないかもしれないってことですか?』と詰め寄られて困りました」

 誰にでも、社内の事情で取引先やお客様からの質問にはっきり答えられない場面がありますよね。
 そんなときに使いがちな「あいまい言葉」ですが、相手に安心感を与えつつ、誠実に対応する方法があります。

 今回は、「たぶん」「おそらく」に代わる、より信頼感を与える3つの表現をご紹介します。

1「現時点での見通しでは」

 この表現は、「今わかっている情報に基づいてお伝えします」と明確に伝える言い方です。
 スケジュールや進捗状況について話す際に適しています。

例)
顧客「この商品の入荷はいつになりますか?」
対応現時点での見通しでは、来週の火曜日に入荷予定です。ただし、輸送状況によっては前後する可能性がありますので、月曜日の午後に一度お問い合わせいただけますでしょうか」

 このように、現在の状況を正直に伝えたうえで、次の行動を促すフォローを加えると、相手に安心感を与えられます

2「可能性として考えられるのは」

 この表現は、見通しではなく「複数の選択肢や結果がある中で、どれが可能性として有力か」を説明するときに役立ちます。

例)
顧客「この計画は、どれくらい効果が出そうですか?」
対応可能性として考えられるのは、現状より20%の効率化が期待できることです。ただし、具体的な効果測定は運用後に実施します。」

 予測を提示しつつ、不確定な部分を明確に伝えることで、誠実な対応になります

3「今できる範囲でお伝えすると」

 この表現は、状況やデータの確認が途中の場合に適しています。

例)
顧客「このサービス、どのエリアまで対応していますか?」
対応今できる範囲でお伝えすると、現在は首都圏全域を対象としています。ただし、新エリアの対応についても社内で調整中ですので、進展があればすぐにお知らせします。」

 不確定な部分を含みつつ、誠実さを感じさせる対応ができます。

 今回ご紹介した表現は、それぞれ異なる場面で活用できます。
 普段何気なく使ってしまう「あいまい言葉」を避けるだけで、会話全体がよりプロフェッショナルで信頼感のあるものになります。

 これらは多くのお客様から信頼を得ているビジネスパーソンが使う、実践的な表現です。
 ぜひ参考にして、日々のコミュニケーションに取り入れてみてください。

(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が書き下ろしたものです。)

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。