社内の気になる身だしなみ。感じよく注意するには何と言えばいい?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

社内のイヤな身だしなみ。感じよく注意するには何と言えばいい?Photo: Adobe Stock

身だしなみを注意できる?

「身だしなみの注意の仕方が難しい……」

 これも管理職研修でよく聞く悩みの一つです。
「注意がハラスメントになるのではないか」と、不安を感じている方も多いようです。

 そんなとき、私はまず、「御社に身だしなみについてのガイドラインはありますか?」と質問します。

 なぜなら、何の規定もない状態で、「その髪型は……」「そのネイルは……」と指摘すると、相手にとっては寝耳に水になるからです。

「今まで誰にも何も言われなかったのに」「なぜ私だけ?」「それってただの主観じゃないの?」と反発を招きやすくなります。

 一方で、ガイドラインがあれば、個人の主観ではなく、職場全体の基準に基づいて注意を伝えることができます

 ここまでお伝えすると、「ガイドラインはあるけれど、新人研修の時しか使われていない」という声が、非常によく聞かれます。

 そうであれば、期初などのタイミングで再活用してみてはいかがでしょうか。
「身だしなみ強化月間」などと名付けて、ガイドラインを全員で読み合わせたり、掲示板を活用するなど、職場全体で意識を高める工夫ならできると思います。

 大切なのは、ガイドラインの存在を周知することです。

身だしなみは組織全体の課題

 もしガイドラインが未整備だけれど、すぐにでも身だしなみについて注意したい場合も、個人ではなく、まずは全員に向けて伝えます。

 さらに、お客様を理由にすると、説得力があります

 営業部門であれば、朝礼などで、

「今朝は身だしなみについて話したいと思います。お得意様の〇〇社さんはマナーや第一印象をとても重視されていることを知っていますか。ということは、私たちも同じように厳しい目で見られているということです」

 と全員に向けて伝え、気になる身だしなみのポイントを共有します。
「皆で気をつけていきましょう」と締めくくると、一方的にも聞こえません。

 そもそも、身だしなみの乱れは個人の問題ではなく、ガイドラインや規定が浸透していない組織全体の課題だと思います。

 適切な基準を設け、それを周知徹底すれば、万が一注意する場面が生じても、相手に納得してもらいやすくなります。

「個人の問題」と捉えず、組織としてどう改善できるかを考え、取り組んでいきましょう。

(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が書き下ろしたものです。)

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。