矢印を自分へ向けて
才能の開花を目指す

 小学校6年時に関東選抜で大きな挫折を味わったけれど、うまくいく体験もそれなりにしていました。自分で自覚しないままプライドというものが芽生え、どんどんと高くなっていたのでしょう。

 自分はできていたし、これからもできる、といったプライドを持つことは、必ずしも悪いわけではありません。ただ、プライドにこだわり過ぎると、失敗しても自分へ矢印が向かず、「今日は調子が悪かっただけだ」と開き直ったり、「自分じゃなくチームメイトが悪いからだ」といった考えに陥ったりしてしまいます。

 それまでのサッカー人生で成功体験が多かったことから、逆境を跳ね返したり理不尽さを乗り越えたりする「リバウンドメンタリティ」や、逆境から自分を回復させたり立ち直らせたりする「レジリエンス」を磨く場面がなかったために、他人に責任を押しつけてしまったり、モチベーションを失ってしまったりする傾向が強まります。まさに僕も、そうなりました。

 サッカーのミスは3種類に大別できます。自分のミス、味方選手のミス、自分と味方が意思の疎通を欠いたことによるミス、です。パスの出し手は足元へ送ったけれど、受け手はスペースでほしかったのでパスがつながらなかった、といったものが3つ目のミスです。

 僕自身の経験に照らすと、味方選手のミスも、意思の疎通を欠いたミスも、自分のミスとして受け止めたいものです。「アイツがミスったから自分は関係ない」とか「何でオレの意図が分からないのだ」と考えるのは簡単です。楽でもある。

 けれど、ミスを他人事にしたら、同じようなミスが繰り返されてしまうかもしれない。いや、おそらくは繰り返されます。それでは、チームに不利益が生じてしまうし、自分の評価も上がりません。

 他人を変えるのは大変です。それならば、自分を変える。自分が変わる。

 他人のミスを受け入れるのは難しいことですが、そこから思考を変えることで始まることは必ずあります。

「これって自分のせいじゃないよなあ」と感じる場面でも、自分に矢印を向ける。たとえば、「自分がその人に対して別のアプローチをすれば、結果は変わったかもしれない」と、人のミスも自分が引き受けるくらいの気持ちでいる。それは、他人よりも成長の機会を多く持つことであり、才能の目覚めや新たな才能の開発にもつながると思います。