2018年2月9日付で全国の学校に出された文科省事務次官による通知では、学校業務が「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」の3種類に仕分けされ、児童生徒の休み時間における対応、校内清掃、部活動、給食時の対応、学校行事の準備・運営、進路指導、支援が必要な児童生徒・家庭への対応など、多岐にわたる学校業務の民間委託が提案された。
家庭力の低下などにともなう業務の増加など、「抱え過ぎ」との批判を受けてきた日本の学校をスリム化すること、予算をつけて教育現場に人員を増やすことは確かに必要だ。
しかし、すでに官民連携が進められてきた海外では深刻な懸念事項も指摘されており、手放しでは喜べない。
その1つは、官民連携のために創設された政府の補助金が突如打ち切られ、財政危機を理由に本来公共事業であったものが民営化されることだ。

鈴木大裕 著
例えば、部活動の「地域移行」が進んだとする。勉強は学校、部活動は地域団体という住み分けができ、学校は放課後の活動を地域団体に依存するようになる。
しかし、そのような依存体質ができた後に、政府の補助金が突如打ち切られたらどうなるか。そうなれば、部活動は学校教育から完全に切り離され、民営化される他はない。
実際に、アメリカでは政府による補助金の設立、それを利用した民間委託の拡大、そして突然の補助金打ち切りが、公教育をはじめ多くの公共事業民営化のきっかけをつくり、格差を助長してきた。
そうなれば、スポーツ、音楽、その他芸術など、今まで部活動がカバーしていた課外活動に参加することが、裕福な家庭の子息、もしくは財政の潤沢な地域に住む子どもたちの特権となる日が日本でも来るかもしれない。