【社説】トランプ関税、ミシガン州に打撃Photo:Bloomberg/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領がメキシコとカナダからの輸入品に対する25%の関税の発動を30日間猶予したことで、企業は安堵(あんど)のため息をついた。しかし、トランプ氏は24日、この関税を来週「進める」と述べた。米自動車業界の労働者やミシガン州における共和党の見通しに打撃を与えることが目的なら、ぜひともおやりなさい、大統領閣下。

 フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は今月、トランプ氏が脅しをかけている関税は米自動車産業に「壊滅的打撃を与える」と警告したが、これは自己の利益のためだけの発言ではない。米国の自動車工場は、カナダとメキシコで生産された部品に依存しており、その一部には米国の原材料が含まれる。経済コンサルタント会社アンダーソン・エコノミック・グループは、関税が発動された場合に見込まれる被害について新たな調査結果を公表した。

 まず自動車価格から見ていこう。この調査では、米国の隣国に25%の関税が課された場合、北米で組み立てられたフルサイズSUV(スポーツ用多目的車)のコストは9000ドル(約134万円)、ピックアップトラックの場合は8000ドル増加すると推計されている。電気自動車(EV)のクロスオーバーSUVのコストは1万2200ドル増加するとみられている。カナダは、リチウムイオン電池に使われている主要な重要鉱物ニッケルの米国への最大の供給国だ。

 こうした価格上昇の一因は、自動車部品に課される関税の複合的な影響だ。自動車部品は国境を越える移動が複数回に及ぶこともある。米国の自動車生産州には、メキシコから約1360億ドル相当の車体および部品が輸出されている。ミシガン州(538億ドル)、テキサス州(269億ドル)、テネシー州(81億ドル)、オハイオ州(24億ドル)、サウスカロライナ州(22億ドル)、アラバマ州(18億ドル)などだ。カナダは504億ドル相当の車体および部品を輸出しており、大部分がミシガン州(221億ドル)とテキサス州(148億ドル)向けとなっている。