関税引き上げで打ち砕かれた楽観ムード
米国経済も「不確実性」強まる
トランプ第2次政権が1月20日に発足、トランプ新大統領は、移民規制強化や、エネルギー、環境政策でバイデン前政権の方針を撤回する大統領令に矢継ぎ早に署名、「米国第一主義」路線でアクセル全開のスタートダッシュだ。
経済政策の柱だった関税引き上げは、就任演説で表明されなかったことで市場には安心感が広がり、関税の影響が懸念されていた自動車株などに買いが入った。
だが2月1日に、トランプ氏はカナダ・メキシコの輸入品に対して25%、中国に対して10%の関税を4日に発動すると宣言。カナダ・メキシコ両国は直ちに報復措置を表明した。日経平均株価の下げ幅が一時1100円を超えるなど、各国市場でリスクオフの動きが広がった。
発動直前の3日、トランプ氏は、カナダ・メキシコとは移民や不法薬物流入の規制強化で協議するとして「1カ月の発動停止」を表明したが、先行きは依然として不透明だ。予告通り4日に関税が発動された中国は即日に、米国から輸入する石炭や液化天然ガスに15%、原油や農業機械などに10%の追加関税を課す報復措置を発表し、米中貿易摩擦がエスカレートする懸念もくすぶる。
トランプ大統領は欧州に対する関税引き上げも示唆しており、火種がグローバル経済に拡大する懸念がある。世界は貿易戦争の瀬戸際だ。一方で米国にとっても主要な貿易取引国への関税引き上げは、インフレ再燃や景気減速につながる「もろ刃の剣」だ。米国経済は予想以上の「返り血」を浴びるリスクを抱える。
深刻なのは、第2次政権には、大統領選からの側近や忠誠度で起用された閣僚などが多く、トランプ大統領にブレーキ役がいないことだ。関税政策に象徴される「トランプ2.0」の「不確実性」は米国経済、そして日本にとってもいかに対峙(たいじ)するのか、今年の重要テーマになる。