
ウクライナの停戦を巡る米国とロシアの交渉と並行して英仏独などの首脳が対応を協議し、欧州諸国は米ロの交渉には停戦実現の期待よりも不安を強めているように見える。「米国第一」のトランプ大統領が自らの外交的成果を優先し、ウクライナや欧州の頭越しにロシアに有利な形での停戦に合意するのではとの疑念は消えないからだ。欧州諸国が目指す停戦とはどのような枠組みなのか、この3年のウクライナ支援の教訓は何か。欧州の政治や国際安全保障を専門にする慶応大学の鶴岡路人准教授に聞いた。鶴岡准教授は、「トランプ大統領の目指す停戦は永続的な安定状態を作り出すことよりも、米国の負担軽減を図ることが主な狙い」とし、欧州諸国が停戦の枠組みで最重視するロシアの再侵攻を防ぐには「停戦後に欧州各国が停戦監視などで軍をウクライナに派遣・駐在させるのが現実的な方法だ」と語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)
米国の負担軽減が第一のトランプ大統領
ロシアを譲歩させるには米国の本気度が重要
――トランプ米大統領が主導して始まった米ロの停戦交渉をどう受け止め、今後、どのような展開を予想しますか。
トランプ大統領が考えているのは、とにかく戦闘をやめさせて、米国の負担を減らすこと。大規模な武器供与をこれ以上、続けなくていい状況にしたいということです。永続的な和平というよりは、とにかく早く停戦を実現したいのです。
トランプ氏は大統領選の時は24時間で停戦を実現すると言っていましたが、最近は数カ月や6カ月という時間に言及しています。当初は、ウクライナに軍事支援をやめるなどと圧力をかければ、戦争は終わらせられると考えていたのでしょう。しかし、ウクライナだけでなくロシアも譲歩させないと、この戦争は終わらないということに気が付いたのです。
この現実を認識したのはよいことですが、軍事的には今はロシアが優勢で、占領地を広げているため、プーチン大統領にとって停戦のインセンティブがない。どうやってロシアを譲歩させるかが停戦実現の鍵になります。
――2月18日に行われた米ロの高官協議でもロシアとの間では双方の主張にはかなりの差があったようです。ロシアを譲歩させるのにどういったことが考えられますか。