ロシアによるウクライナ侵略から丸3年を迎えるが、いまだ戦争に終わりは見えない。そうした中、トランプ次期米大統領が和平交渉に強い意欲を見せているが、果たして和平案を両国は受け入れるのか。特集『総予測2025』の本稿では、和平案を予測すると共に、今後の戦争の行方を占っていく。(防衛研究所研究幹事 兵頭慎治)
戦争長期化で日本の安全保障はどうなる?
ロシア・プーチン大統領の狙いとは
2025年2月24日で、ロシアによるウクライナ侵略は丸3年を迎える。両国の死傷者は推計100万人を超え、共に長射程ミサイルで相手国を攻撃するなど戦闘は激しさを増している。
ついに北朝鮮も事実上、参戦することとなり、この戦争が東アジアの問題に転化した。25年1月20日に就任するドナルド・トランプ次期米大統領は和平交渉に強い意欲を見せているが、この戦争は25年中に終結を迎えられるのか。
トランプ氏は、「双方で多数の命が犠牲となっており、自らの大統領就任までにこの戦争を終わらせる」と述べたものの、現時点では具体的な解決策に言及していない。米国が提案する和平案とは、どのような内容になるのか。
24年11月末、ウクライナ侵攻終結担当特使として、第1次トランプ政権で副大統領補佐官を務めたキース・ケロッグ元中将が起用されることが判明した。同氏は、トランプ氏に近い保守系シンクタンクの「アメリカ・ファースト政策研究所」に属し、24年4月に独自の和平案を公表している。
それは、現在の戦線を暫定的な休戦ラインとした上で停戦するという、北緯38度線を「非武装地帯(DMZ)」とした、いわゆる「朝鮮半島方式」である。
現時点で、ロシアとウクライナの双方が、この停戦案に応じるかどうかは明らかではない。ウクライナは国土の約2割がロシアに掌握されているが、全ての占領地の奪還を掲げてきたウクライナのゼレンスキー大統領にとっては、受け入れ難い妥協案である。
他方、ロシアのプーチン大統領にとっても、現状で手打ちにすることは難しい。ロシアは既に憲法を改正して、クリミア半島に加えて東部・南部の4州をロシア領と認定しており、4州の軍事的な完全制圧を断念することができないからだ。
プーチン氏は、「非ナチ化(ゼレンスキー政権の打倒)」「非軍事化(ウクライナ軍の解体)」「中立化(ウクライナの北大西洋条約機構〈NATO〉非加盟)」という三つの戦争目的は達成されていないとして、今後も軍事侵攻を続ける姿勢を崩していない。しかも、プーチン政権は最長36年まで存続する可能性があり、あくまでも長期戦の構えである。
双方にとって受け入れ難い和平案であるが、トランプ新政権は、どのようにして両国を交渉のテーブルに引き寄せようというのか。
ウクライナとロシアの双方が受け入れがたいとされるトランプ次期米大統領の和平案だが、トランプ氏はメンツをかけて停戦を推し進めることだろう。その方策とは何か。次ページでは、難航が予想される停戦合意の行方を占っていく。