若林 口腔(こうくう)粘膜から吸収されるから早く効くようです。筋肉の神経は電解質によって調節されていますが、そのイオンバランスが崩れると、筋痙攣が起こります。そのバランスを整える作用があるので、効くという研究があります。

若林 ほかに即効性のある薬は、小青竜湯(ショウセイリュウトウ)、葛根湯(カッコントウ)ですね。小青竜湯は、いわゆる鼻風邪のときに処方されるんですが、時期や体質が合うと本当にぴたっと鼻水が止まります。

 あと病院でよく使われるのは、婦人科系の漢方で、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、加味逍遙散(カミショウヨウサン)、胃や腸の切除手術後によく処方される大建中湯(ダイケンチュウトウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)があります。

仲野 ちょっと意外な感じがしますけど、外科で漢方が結構使われるみたいですね。論文を読んだことがあります。

多くの人が悩んでいる
「気象病」にも効果アリ

若林 五苓散は本当に便利で、いろいろな症状に使えるんですよ。そもそもは嘔吐(おうと)・下痢のときに使う薬で、子どもの場合はファーストチョイスとして処方されることが多いです。

仲野 嘔吐や下痢そのものが治るんですか。

若林 はい。水分の分布を変える薬なんです。

仲野 しかし、西洋医学を学んだ者としてはですね、それまたわかりにくい話なんですよ。「水分の分布を変える」ってなんのこっちゃねん、って。二日酔いに効くことは身をもって経験してるけど、その理由が水分の分布が変わるからと言われても、どういうことなんや?と思ってしまいます。

若林 二日酔いに関して言えば、吐き気などの中枢神経系の酔いというのも、おそらく内耳がむくんで引き起こされているんですよね。それが改善される。

 あとは最近よく言われる「気象病」にも効果があると言われています。気象病というのは、内耳にある気圧を感知するセンサーによって自律神経系が異常を起こして、めまいや耳鳴り、吐き気が起きてしまう症状です。ですから、水分が一部分に溜まってしまうのを五苓散によって平均化するという考え方だそうです。

仲野 不思議やなあ。実際に効く患者さんもおられるんですか?

若林 けっこう効きますね。慢性痛が発生しやすくなる状況、たとえば気圧が変動してるときに、まず前駆症状が出ますよね。なんとなく目の前がチカチカするとか。そういうときに五苓散を服用すると、それ以上症状が悪化せずに済みます。気圧低下のときには脳の血流量も異常に増えたりするらしく、それを抑止する作用もあるようです。

仲野 軽い硬膜下血腫まで治るぐらいやから、信じておきます。