仲野 じゃあ、気象病の人は、天気予報で前線が通過するとか言われたら、五苓散を前もって飲んどこうとかできるわけです?
若林 できますね、ほとんど副作用もない薬ですから。
便利な漢方薬「五苓散」には
東洋医学の神秘が詰まっている?
若林 実は五苓散は「西洋医学」的な説明がされていますよ。科学的に作用機序が明らかになっている漢方のひとつでもあります。漢方メーカーのウェブサイトなどにも、「五苓散が、細胞内の水の取り込み口であるアクアポリン4に働きかけ、細胞内の水分量を調節していることがわかっています」と書かれています。
仲野 「アクアポリンに効く」「水の分布を変える」、言われればそうかな、と思ってしまいます。でもね、このふたつは直接的に繋がらへんのとちゃうやろか。
若林 そうなんですか(笑)。
仲野 そうそうそう(笑)。水という共通項があって、なんとなく関係するように思わせられるけどちょっと無理かと。アクアポリンというのは、細胞膜にあって水を通すタンパク質です。その調子が変わったぐらいで、全身の水バランスが変わるなんてことは考えにくいでしょう。
若林 たしかに、細胞が分化して組織となり、いろいろな臓器になっているのに、なぜ全身に一定に効くのかわからないですよね。「効いた」というのも大雑把な見方で、脈が普通にもどったり、舌の色がよくなったら効いたことになる。そういう改善点が見られたら、その薬を続けると症状も改善されていく。

仲野 薬ですから、分子レベルで効いてることは間違いないわけです。科学的に考えて、それ以外の効き方はありえない。これは絶対的な真理です。もしかしたら、いろんな種類の細胞にちょっとずつ違う効き方をしてるんかも。あるいは、アクアポリンにも効くけど、それだけじゃなくて、多くの作用点のうちのひとつがアクアポリンなのかも。
若林 そうかもしれません、ピタゴラスイッチみたいな効き方をする。
仲野 でも、それってトリッキーすぎるな。面白いけど。
仲野 鍼やお灸と同じで、漢方もどう作用してるかよくわからんところがあるってことですよね。ほんまに不思議でたまりません。