
西洋医学と東洋医学。どちらも「医学」と名がついているものの、双方の病気に対するアプローチはまったく異なる。身近な病の「風邪」をひとつとっても、東洋医学では5つの種類が存在するという。生命科学者で元・大阪大学大学院教授の仲野徹氏と、東洋医学の専門家で鍼灸(しんきゅう)師の若林理砂氏の2人が、「風邪」について語り合う。※本稿は、仲野徹、若林理砂『医学問答 西洋と東洋から考えるからだと病気と健康のこと』(左右社)の一部を抜粋・編集したものです。
西洋医学と東洋医学で異なる
気圧・気候による体調への影響
仲野 気候とか気圧に左右されて体調悪くなる人がけっこうおられて気象病とも呼ばれますが、これは東洋医学には昔からあった考え方ですか?これと風邪は近いのでしょうか?
若林 そうですね、風邪(ふうじゃ)の概念に繋がります。
これは自説なんですけど、風が吹くときは気圧が変わるときでしょう?気圧の変化によって自律神経系が攪乱(かくらん)されて不調になり、さらに条件が重なると病気になるという原理だったのかなと思います。
仲野 気象病は、ないとは言いませんが、西洋医学ではあまり重んじられてこなかったという印象です。
若林 いまでは、西洋医学の分野でも愛知医科大学の佐藤純さんなどが気象病の研究をしていますね。愛知医科大学病院・いたみセンターで、気象病外来・天気痛外来もされています。研究所には巨大なエアチャンバー(人工気象室)があって、気圧を変えたときにリウマチなどの痛みがどう変化するかを実験したりしていました。その実験で科学的な数値が出て、気象病があることが認められた。
その後にも、低気圧が通過した数日後にリウマチが悪化するという研究を京都大学の保健管理センターが出しています。エアチャンバーは気圧だけじゃなく温度や湿度も変えられるそうですが、はっきりした数値が出たのは気圧だけだそうです。だから温度や湿度による不快症状のほうの理由がまだ特定できていません。