
大学病院から町のクリニックまで、さまざまな医療機関で処方される漢方薬。身近な存在であり「西洋薬よりもゆるやかに効く」というイメージを持つ人も多いが、なかには即効性のある漢方薬も少なくないという。生命科学者の仲野徹氏が、人気鍼灸(しんきゅう)師で治療家の若林理砂氏に「漢方薬の効き目」について尋ねる。※本稿は、仲野徹、若林理砂『医学問答 西洋と東洋から考えるからだと病気と健康のこと』(左右社)の一部を抜粋・編集したものです。
漢方薬は「効かない」は勘違い
即効性のある漢方薬とは
仲野 満を持して漢方薬のことを聞いてみたいです。世間で抱かれる漢方って「ゆるやかに効く」「副作用が少ない」というイメージがあります。一方では「ゆるやか」どころか「効かない」と思っている人もいるかと思います。これは実際どうなんですか。
若林 実は即効性があるものもけっこうあるんです。
仲野 自分の経験で言うと、五十肩のときに飲んだ独活葛根湯(ドッカツカッコントウ)と、二日酔いのときの五苓散(ゴレイサン)。このふたつはよく効きました!あくまでも、青汁のテレビコマーシャルみたいな「個人の感想」ですけど。
若林 麻黄湯(マオウトウ)はインフルエンザの初期にてきめんに効きます。15分くらいで発熱して熱が一気に下がるんです。川崎病のような症状に対して処方される黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)という薬もこれも証(編集部注/ショウ。個人の体質や体力、症状の現れ方などをあらわすもの)に合うと即効性があり、熱が下がります。不眠症、動悸(どうき)、更年期障害などにも使われる薬です。
仲野 でも飲み合わせには注意が必要でしょうね。
若林 いくつかの漢方は抗生物質と飲み合わせが悪いものがありますからね。たとえば、小柴胡湯(ショウサイコトウ)などの柴胡の入ったものはダメです。
仲野 あと、即効性のある漢方といえば芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)!妻がよくこむら返りになるんですが、飲んだら一瞬で治るみたいです。
若林 あれよく効くんです。薬理作用がはっきりとわかっている数少ない漢方です。
仲野 へぇ、薬理作用わかってるんですか。飲んだら瞬時に治るみたいで、そんな一瞬で治るかいな、気のせいちゃうんかって疑ったりするんですが、本当にそんなに短時間で効くんですか。