
ウクライナは米国との間で、鉱物資源の権益に関する協定の枠組みについて合意した。ここで難しい問題が出てくる。それは地中から資源を掘り出すことだ。
ロシアとの戦争によって、ウクライナの重要鉱物鉱床の最大40%がロシアの支配下に置かれることになった。だが戦前でさえ、一部鉱物の探査活動が停滞し、インフラや鉱床の最新の地図すらなかったことが、ウクライナでの大規模な新規民間プロジェクトの大きな障害だった。企業幹部やアナリストはそう指摘する。
汚職や官僚主義的な手続き、煩雑な法制度、企業を狙った収奪行為の歴史はずっと前から、ウクライナのコモディティー(商品)セクターへの外国投資を阻んできた。
アンドリイ・スモリン氏に聞いてみるといい。
スモリン氏が勤めるアベラナ・ゴールドは、偽の鉱業会社の標的にされた。同氏によると、この偽会社は捏造(ねつぞう)した主張によってウクライナ西部にあるアベラナの金山を奪おうとした。その結果、ウクライナの複雑な法制度の下で長期にわたり争われることとなり、大きな被害を被ったという。
「ウクライナでは、誰でもさまざまな手段で活動を妨害できる」。アベラナのウクライナ事務所長を務めるスモリン氏はこう語った。
ウクライナの下級裁判所では特に司法の腐敗がはびこっていると、アナリストは指摘する。スモリン氏によると、そうした司法の腐敗のせいで審理が長引き、アベラナはその間に生産できなかったことで損失を被ったという。同社は最終的にウクライナ最高裁で勝訴した。最高裁は公正な機関であり続けていると同氏は語る。アベラナはライセンスを所有していることを証明したが、それまでに当初の投資家をすべて失っていた。