
問題があることがわかっているのに
なぜ先送りされるのか
企業や組織では、いずれ重大な局面を迎えるとわかっていながら問題の先送りを続け、最終的に社会的信用を失うケースが多々見受けられる。
例えば、各種メーカーにおける製品データの改ざんや、財務状況をよく見せるための粉飾決算、時代にそぐわない極端なハラスメント体質などが典型例だ。これらの問題が是正されないまま、何らかのきっかけで問題が明るみに出ると、経営陣の引責辞任、株価の下落、果ては企業の存続危機といった深刻な事態に陥ることがある。
こうした例はいずれも、「問題が深刻化する前に手を打つべきだ」という認識が当初からあったにもかかわらず、実際には何も行動できず、結果的に大きな被害や損失を被ってしまう点が共通している。では、なぜこのような事態が繰り返し起こるのか。代表的な理由として、以下の5点が挙げられる。
1. リーダーシップの不足
組織が大きく方針を転換するには、強力なリーダーシップが必要である。しかし、「まずい問題」に正面から向き合い、その解消を実行する際には、多くの“痛み”が伴う。
例えば、
・問題を発生させた人物や、黙認してきた過去の経営陣への懲罰(人事的な懲戒処分や賠償など)
・被害者となった取引先などへの補償
・社会的評判の低下やメディアからの糾弾
といったものだ。
これらの要素は想像を超えるストレスを生み、社内外から強い反対や抵抗が起きることも少なくない。そうした中で毅然と立ち向かい、組織を正しい方向へ変革していくためには、並外れた統率力が求められる。リーダーシップが不足している場合、問題が深刻化する前に手を打つことが難しくなる。