5. 最初に問題を公表した会社への極端なバッシング
「最初に不正を公表した企業が集中砲火を浴び、それに続く同種の事案はあまり批判されない」という社会的風潮も、問題解決の先送りを助長する大きな要因である。例えば、自動車業界の検査不正問題においては、最初に発覚した企業はメディアからの強い批判にさらされ、親会社の株価も下落した。
しかし、その後に別の企業の類似の不正が明らかになっても、世間の関心は薄れており、バッシングもそこまで激化しなかった(コロナ時の雇用調整助成金の不正受給、ホテルの食品偽装問題など、それにかかわる多くの企業がのちに同様の問題が発生したことを公表したが、最初に話題になった企業と比較すれば、全く軽微な注目しか浴びていない)。
この現象の背景には、「初めて目にする衝撃的事案には大きく反応するが、同じような事例が続くと慣れてしまう」という心理が指摘できる。また、メディアも第一報のインパクトを重視するあまり、後発事例には紙幅や放送時間を大きく割かない傾向がある。
その結果、組織内で「先に発表すると目立って叩かれるので、今は黙っておいて、どこかが発表してからの方が無難だ」という「先に言ったもの負け」のような悪しきインセンティブが働くことになり、自主的な問題公表や早期の是正対応が進まずに、隠蔽や先送りが常態化するリスクが高まる。
問題を公表し、是正する姿勢を促すために
必要な2つのこと
以上のようなに、悪弊を排し、リスク管理や危機対応を組織が積極的に行い、社会的損失を最小化するなら、企業や組織内部の取り組みだけでなく、社会全体やマスコミの報道姿勢にも変化が求められる。
自ら問題を発表する企業への温かい評価
企業が自主的に問題を公表する場合、社会的批判や業績悪化といったリスクが非常に高いのが現状だ。
しかし、早期に問題を公表し、被害拡大を防ぐことは社会全体にとっても有益であり、むしろ誠実な対応と評価されるべき行為といえる。そのため、メディアや世間には「問題を起こした=悪」という単純な構図ではなく、「最初に問題を公表した姿勢」を正当に評価し、建設的な改善を促す風土づくりが求められる。