「新幹線生みの親」など
5人の文化勲章受章者

経済アナリストの森永卓郎経済アナリストの森永卓郎 Photo:SANKEI

 都立の伝統校で、旧制東京府立四中を前身とする。東京・新宿区にあるものの、校地周辺は文教エリアだ。都立新宿高校とライバル関係にあるが、「軟派」とされる新宿高校に対し、戸山高校の校風は「硬派」で知られている。

「教養主義」という伝統で育った卒業生の中から、多くの学者・研究者、文化人を輩出している。

 文化勲章の受章者が、5人いる。国鉄の技師長を務め、総裁・十河信二(愛媛県立西条中学・現西条高校卒)と共に「新幹線生みの親」と言われた島秀雄が、1994年に受章している。島は府立四中を経て旧制一高―東京帝大工学部機械工学科卒。象牙の塔育ちではない現場出身の技術者としては、異例の受章だった。

 さらに哲学者で京都学派を代表する田辺元、数学者で大阪大総長・武蔵大学長を務めた正田建次郎、それに2011年に受章した分子生物学の柳田充弘(むつひろ)が、文化勲章を受章している。

 正田は、上皇后美智子さま(東京・私立聖心女子学院高等科卒)の伯父に当たる。柳田は新制の戸山高校卒で、京都大教授を長く務めた。

 数理脳科学者で元東大教授の甘利俊一が、19年に文化勲章を受章した。神経回路網理論研究の成果は、AI(人工知能)の超ネットワークの学習に使われる計算法の源流の一つとなった。

 24年のノーベル物理学賞はAI研究者であるカナダ・トロント大学と米プリンストン大学の学者に与えられたが、「この人が受賞しないのはおかしい」と言われた研究者が甘利だった。甘利は2人の研究者より10年以上早い時期にほぼ同内容の論文を書いていた。

 文化功労者では、応用微生物学の別府輝彦、憲法学の宮沢俊義らがいる。宮沢はプロ野球の第4代コミッショナーを務め、ドラフト制度を導入した。

 眼科医で色覚検査表を開発した石原忍も、文化功労者になっている。